今日は12月27日。
合宿3日目である今日の夕飯はハンバーグにうどん。
野球部の合宿で1番何が辛いって聞かれたらすかさず食事、と私は答えます。
マネージャーもそれなりに動いてはいるし疲れるんだけどそれは選手に比べたらちっぽけで、どちらかと言えば精神面での疲れのが大きい。
且つ成長期である彼らの胃袋の大きさったら半端ないの一言で済むようなものじゃなくて、部内一の大食いである3年エースの先輩は白米3杯、うどん5杯をたらふく食べていた。
…恐るべし合宿。
そんな彼らと同じ量を食えと言われても食べれないのでマネージャーはあらかじめ選手達にいろんなものをあげる。
夏合宿は1年の宿命ってことで全部食べさせられてたけどね。



「1月4日、部活初めっつーことで初詣行くぞー!」

「あ、恒例のやつね。」

「去年は全員で大地の合格祈願したな。」

「ほんと、あんときはひやひやさせられたよ。なんで1月まで勉強サボってんだか…。」

「大地って進学危うかったのか?」

「推薦試験一度落ちてんだよコイツ。」



今はミーティングが終ってホールで1年がストレッチ中。
ペアでマッサージしつつ会話を交えながらのんびり過ごせるこの時間が私は好きだったり。
端っこで午後に行われた紅白戦のスコアを整理していたら突然ケータイが鳴った。



「!!」

「夏紀、電話?」

「う、うん…」

「何をそんな、あ!もしかして丸井くん?」



肯定の意味を込めて頷いたら早く出なさい!って怒られた。



「も、もしもし?」

『お、高田?なかなか出ねぇから忙しいかと思ったぜぃ。…今大丈夫か?』

「平気、だよ。どうかした?」



丸井を好きだと自覚してから面と向かって話すのが怖いってゆーか、緊張してたんだけど電話はその何倍も緊張した。
(顔は見えないのにな。)



『あのよ、一緒に初詣行かね?』

「初詣?」

『おう。海岸沿いに神社あるじゃん。そこでどーかなって。…もう予定入ってっか?』

「う、ううん!暇!すんごい暇だよ!!」

『ぷっ!どんだけ暇なんだよぃ!んま良かった。じゃ一緒に行こうぜ』

「うん!あ、丸井!」

『ん?』

「それ、31日の夜から、並ぶのって有り?」

『別にいいぜぃ?そのまま初日の出なんかもいいな!』

「じゃあ、駅に23時くらいに待ち合わせよ!」




そこから少し話して電話を切った。
(丸井と、年越し…)
クリスマスイブに続き年越しまで一緒にすごせるなんて、幸せすぎて今ならご飯も3杯いけるかも。
ニヤつきながらケータイを閉じたらニヤニヤしてるマネと部員が周りに居た。



「合宿来てまでイチゃつくなよなー」

「山田ですら自重してんだぞ!」

「イチャイチャって…付き合ってないからね!!」

「でもそのうち付き合うんだから同じよ」

「好きな人と年越しとか羨ましー!!」

「もうそんとき告れよ!あけましておめでとう、好きです!みたいな?!」

「年明けの高田に会うの楽しみだわ〜」



みんなに冷やかされながらも頭の中は丸井の声が焼き付いて離れない。
未だに早いままの胸のリズムを抑えつつ、思った。
告白してみようかなって。








恋する乙女は強いのだ


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