平凡 | ナノ

新しい扉を開いた日







「横浜から転校してきました椎名ゆきです。よろしくお願いします。」



転校初日、生徒会で身につけた社交辞令ってやつをバリバリに使いこなし、新しいクラスへとやってきた。
先程の挨拶はもちろん、スマイル0円の作り笑いつき。
その笑顔にばあまり深く関わらないでください゙って思いを込めておいた。(多分誰にも伝わってないけど)
変わりたいって思ったけど、どうしたら変われるのかその答えが見つからないまま今日を迎え、結局は前と同じ自分が居た。



「お前の席はドア側の1番後ろ、手塚の横な」



先生の言う方へ視線を向ければ仏頂面した男の子が一人。
ぱっと見先生かと思ったのは内緒にしておこう。



「椎名は放課後色々渡さなきゃいけないのあるから職員室来いよ!んじゃあとは自由にしろー!」



先生の一言を皮切りにみんなそれぞれの席を立つ。
あたしも先日もらった時間割表を確認して席を立った。のだけれど、



「どこに行くんだ?」

「どこって…次理科でしょ?実験室って聞いたんだけど、間違ってる?」

「いや、椎名の言う通りだ。」

「じゃあなんでそんなこと聞くの」

「わかるのか?場所。」

「……微妙」



そう答えたら手塚くんは席を立ち、案内すると言って歩きだした。
もしかして、見かけだけじゃなく中身も先生ちっくなの?!







*







「なんかめちゃくちゃ視線を感じるんだけど、気のせい?」



手塚くんと廊下を歩き出して恐らく2分も経ってないと思うんだけど、周りからの視線が痛い。
特に女子。



「手塚くんって部活なに?」

「テニス部だ。」

「強いの?」

「去年は関東止まりだ。」

「ほー関東!そっか、だからこんなに…」

「なんだ?」

「…んーん、なんでもない。」



もう一度周りを見渡す。
あの女の子たちの視線は、手塚に対する好意の視線だ。
あたしに向けられたものではないと知って一安心。



「手塚くんって頭良さそうだね。」

「…初対面で言われたのは初めてだ。」

「うそー!もうその眼鏡からしてがり勉っぽいじゃん!」

「失礼なんだな、椎名」



グッと眉間にシワを寄せた彼をまあまあと宥める。
それからまた一つ質問をした。



「ね、手塚って呼んでもいい?」

「別に構わない。」



これが手塚との出会いだ。







*







「先生、椎名ですけれど。」
「おー、これ全部持ってけ!」



先生に渡されたものはプリント類と持っていない教科書だった。



「そういえば、椎名は前の中学で生徒会だったよな?」

「…そうですけど、」



あ、なんか嫌な予感するって身体が言った。
あたしの直感当たるんだよなって気づくのが遅かった。



「丁度いい、副会長の枠が埋まらねぇから椎名やってくれ!」

「……私転校生なんですけど?」

「大丈夫だ!何たって会長は手塚だからな!!」







無意味な事。価値ある事
これがあたしにとってメリットがあるのか
はたまたデメリットだらけなのか
全くもってわかりません


2011 11/06