平凡 | ナノ
金髪ガール
全国大会前日。 昨日大石から連絡のあったあたしは急いで神奈川にある立海へと向かった。 会いたかったとか寂しかったなんて言葉を並べるとまるで恋人みたいで嫌だけど、あたしは手塚に会いたかった。 ルンルン気分で登校日二日目を迎えた訳だけど、
「なんだあの人混み」
部室へ向かう途中、校門で人混みを発見。 好奇心に負けてその人混みに行くと、竜崎先生のお孫さんである桜乃ちゃんが誰かに話し掛けられていた。 話してる相手は金髪で青学ではない制服。 派手な色のワイシャツに、そのスカートを見てはっとした。
「桜乃ちゃん!」
「あっゆき先輩…」
「え?ゆきちゃん?」
化粧バッチリでピアスがキラキラ光ってる彼女に「久しぶり椿ちゃん」と言ったら嬉しそうに微笑まれた。 根はいい子なんだよね。
「ゆきちゃんが転校したからあいつが生徒会長になっちゃったじゃんよー!」
「やっぱそうなんだ…。それより、どうして椿ちゃんがここに?」
「昨日この子に道案内してもらってさー。そん時にそれ落としていったから持ってきてあげたんだー。優しくね?」
それと指されたのは恐らく桜乃ちゃんが握りしめてるヘアバンド。 てか、よく椿ちゃん相手に道案内が出来たな。
「先輩!そろそろ部活…」
大丈夫ですか?と言われて振り返ると、テニス部レギュラーが勢揃いしてました。 あ、早く来いよってこと?
「椎名、そろそろ竜崎先生がいらっしゃるぞ。」
「!…椿ちゃん、先生来ちゃうから帰った方がいいよ」
「えー!せっかくゆきちゃんと会えたのにー?」
「面倒事になると、ね?またいつでも会えるって!ほら、森くんたち出発する準備してる」
「ほんとだ!んじゃまたねー!!」
スキップで校門に向かう椿ちゃん。 そこには2・3台のバイクと厳つい男女5名。 見かけたことのある顔ばかりで森くんと椿ちゃん以外はみんな年上だ。
彼女達が学校を去ると、周りの生徒から尊敬の眼差しと共に拍手された。
「椎名にはああいう友人も居たのか…」
「友人っていうかクラスメイトっていうか…根はいい子なんだよ?」
「あんなふうに話せちゃう椎名はすごいよ…」
レギュラーからは意外との言葉を浴びせられる。 前の中学にはいっぱい居ましたからね、俗に言う不良って子たち。 あたしはその子たちより教師の方が嫌いだったから普通に話せちゃう。
「あの!」
「ん?」
「ありがとうございました!あたし、どうしたらいいかわかんなくて…!」
「平気だよ?あんなバッチリメイクにバイクで金髪とか、誰だって怖じけづくよ。それよりよかったね、それ持ってきてもらえて。」
椿ちゃんからしたら、これはお礼みたいなもんだから。 邪険にせず相手してくれた桜乃ちゃんに感謝です。
「僕はさすがゆきだなって思ったよ。」
「え?」
「見た目で決めつけないところがゆきらしいなって。」
普段散々けなしてくるくせに、時々こうして優しく褒めてくる不二がどうも気に食わないです。
エゴイスト様 「あれ、照れてるの?」 「ばっ!顔覗くなあああ!」
2012 03/26
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