平凡 | ナノ

一人じゃないよ




「おい桃!早くしろ!!」

「ウォーミングアップはできたようだな。」

「暴れてやりましょうよ、桃先輩!」

「ああ!」



氷帝戦の今日、大石は妊婦さんを助けて右腕を怪我した。
この状態で試合に出ても迷惑をかけると判断した大石は自分の代わりに桃城を試合にだしてくれと言ってきた。



「さあ…油断せずに行こう。」

「青学ーっファイッ」

「「オウッ!!」」



ということで急遽決まった桃と英二のダブルスペア。
(越前にダブルスをやらせる訳にはいかないって手塚が言っておりました)
まあこれが最善の策だよね。
不二曰く、越前はとっておきの切り札らしい。



「勝つんは氷帝」

「「勝つのは氷帝!!」」

「負けるの青学」

「「負けるの青学!!」」


「…これが噂の氷帝コール…」



コートが氷帝コールに包まれながらD2の試合がスタートした。








*








「ゲーム氷帝!4−0!」



あれから氷帝コールが止まることなく響き続けた。
英二の更に上をいくアクロバティックプレイをする例の赤髪向日くんに桃のダンクスマッシュ、ジャックナイフを簡単に打ち返してくる忍足くん。
これが、氷帝正レギュラーの実力。
もうそろそろ二人とも危ないかも。と思った時、英二の手の中でラケットがくるくる回った。



「諦めるな!諦めなけりゃ必ず弱点は見えてくるんだ。チャンスはどっかにあるはず。オレたちの力を信じよう!…なーんて、全部大石のウケウリだけどねん!」



彼らはまだまだ諦めてなんかなかった。
むしろやる気が倍増してる。



「青学ファイオー!」



一人叫んだら英二と桃がピースで返してくれた。







*








「やったね大石!」

「ああ!桃のおかげだよ。アイツが居てくれたから勝てた!」



D2は6−4で青学の勝ち。
英二がアクロバティックプレイを捨て、先輩として桃をリードし、大石の位置で動かしたのが勝因だ。
それになんだか、桃はゲームの展開を読んでいた気がする。



「最後の一球凄かったね」

「桃城は青学一の曲者だ。」

「本人はまだ気づいてないみたいだけど…桃、ゲームを読んでるみたいだったね」

「!!…そう見えたか?」

「今までのことが積み重なってそう見えたんだ。こないだの紅白戦の雨だって桃が予言者みたいに言ったら本当に降ってきたし。これって武器になる?」

「ああ。そこにアイツの柔軟性が隠れているのかもしれないな」



早く気づけるといいな。
手塚の顔をチラ見したら、ほんの少し嬉しそうだった。
多分試合中だから(というか普段からだけど)隠してるんだろうな。
ま、あたしにはバレバレだけどね。



「さあ海堂、行くぞ」

「フシュー」



気づけばD1が始まろうとしていた。
ある意味このペアの試合は将来がかかってると言っても過言ではないと思う。
青学はダブルスペアが少なすぎるから。



「いってらっしゃい乾、海堂」







どんなピンチだって仲間が隣に居る
「英二!ドリンク!」
「にゃっ!これゆきドリンクじゃん!やっほーい!!」


2012/01/13