平凡 | ナノ
たまには貴女と。
今日もいつも通り授業を受けていつものように部活を行い家路についた。 1時間目の国語の時に不二から手紙が回って来て、そこから絵描きしりとりがスタート。 まあ、主犯は英二ですけどね。 不二の書いたサボテンがりあるで凄かったけどそこでしりとりはお終い。 一切ノートを取らずに授業までも終わってしまった。
部活は球拾いをして腰が痛くなった。 腰をトントン叩いてるとこを越前に見られ「まだまだだね。」と言われて悔しくなって、乾に簡単な筋トレメニューを考えてもらった。 今日からはじめよう!って意気込んでいたら、前に見知った後ろ姿を発見。
「柚菜?」
「!!ゆきちゃんじゃん!」
前の中学で仲の良かった女の子、伊藤柚菜がそこに居た。
「こうやって会うの久しぶりだね。」
「メールは時々してるけど、なかなか会えないもんね。」
あたしが以前通っていたのは公立の中学。 公立は学区で進学する学校が決まってるからこの一帯はみんな、受験をしない限り同じ中学に通うことになる。 あたしは転校したけど家は変わってない。 だからこうして知り合いに会うことも少なくないはずなんだけど、なぜか今日まで知人に会うことはなかった。
「もうすぐ合唱コンなんだ。」
「もうそんな時期だっけか!」
「ゆきちゃんの学校は?」
「こないだテストが終ったよ。んですぐ部活の都大会があるんだ」
柚菜の家の方が近いので彼女の家までひたすらお互いの学校の話をしながら歩いた。 あの子が付き合いはじめたとかあの部活が試合に勝ったとか、本当に他愛もない話ばかり。 だけど柚菜とこんなゆっくり話をしたのは、初めてのような気がする。
「久しぶりにあれ、飲みたいなぁ」
「あれって?」
「ゆきちゃん特製”元気の出るジュース”!」
嬉しそうな彼女の顔を尻目に彼女の言葉をリピートする。
「忘れちゃった?あのオレンジの入ったジュースのことなんだけど…」
そこまで言われてああ、あれのことか。と思いだした。 粉で作ったスポドリにオレンジの搾った汁を等を入れて作るあのドリンク。 そんな名前を付けられてるなんて知らなかった…。
「あれ、部活で作ってみたら好評だと思うよ!」
「そうかなあ…甘すぎたりしない?」
「全然!あれ飲むと本当に元気になれる!!」
柚菜はこうやって無意識に自信と勇気をあたしに与えてくれていた。 また彼女のおかげで、新しい事に挑戦できるかもしれない。
「毎日はちょっと厳しいから、大会の時に試しに作ってみるよ。そしたら柚菜にも届けるね!」
「本当?!うふっ!楽しみだなっ!!」
柔軟剤の甘い香り あたしが転校したのは 彼女を裏切ったことに相当するの?
2011 12/24
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