平凡 | ナノ

噂と女は2コ1







『もしもーし』

「あ、玲奈?ちょっと今さ、教室戻りたくないから1時間屋上でサボるね」

『え?なんでそ《椎名ゆきはどこっ?!》…うん。適当に言っとくね。』

「はははー…ありがと。」



ケータイを頭の横に置いてブランケットをかけ直す。
透き通った空を眺めながら今朝のことを思い出していたら、吐き気がした。
見ず知らずの人に睨まれるわ女子から質問攻めされるわ散々な登校だったよ。
てかさ、なんで昨日決まった”男子テニス部マネージャー”のことが今日になってこんなに広まってるわけ?!



「椎名さんは屋上でサボる派なの?」

「えっ?」



声のする方へ首だけを捻って見たら、



「不二くん、だっけ」



茶色のサラサラヘアーの不二くんが居ました。
寝ていた体を起こして立ち上がる。



「寒くないの?僕なら空き教室を選ぶよ。」

「…屋上って青春っぽくない?」

「ふふっ。さすが手塚の親友だね」

「それって褒めてる?けなされてる気がしてならないんだけど!」



褒め言葉として受け取ってと微笑まれたので、黙りました。
言い合いは仲良しとしかやらない主義なんです私。
(ごめんね不二くん。)



「なんで不二くんはここに来たの?」

「君を迎えに行こうとした手塚の代わり。君と話してみたかったしね。」



あたしが寝転がってた横に座ってトントン地面を叩く。
あ、ここに座れって意味ね。



「マネージャー辞めろって話なら大歓迎だよ」

「ふふ。そんな話するわけないじゃないか。僕は君と話がしたいんだ。」

「…なに話すの?」

「手塚の隣を堂々と歩く椎名さんはテニス部じゃ有名だから。ね、ひとつ聞いていい?」

「なに?」

「何故1番に手塚と仲良くなったんだい?」








*







朝、HRの前に手塚のクラスを訪れたら女の子がたくさん居た。
彼女たちの話をきいてると、どうやら椎名さんを見に来たらしい。
すると手塚が席を立ち廊下へとやってきた。



「手塚!」

「不二か。すまないが長話なら後にしてくれ」

「どこかへ行くの?」

「ああ。屋上に行ってくる。」



詳しく聞けば椎名を迎えに行くなんて言うもんだから思わず、「代わりに僕が行ってくるよ」なんて言ってしまったんだ。
あの手塚が唯一親しくしていて、且つ彼がマネージャーに推薦した女の子。
気にならない訳がないよ。



「学校で誰かに心配されたの初めてでさあ」

「…心配?」

「いつも周りはあたしを頼ってきて、それが当たり前だからみんなの面倒を見てた。だけど、手塚は違ったんだよ。」








*







手塚はあの日、案内すると言ってあたしの横を歩き出した。
その時に何となく、この人となら仲良くなれそうって思ったんだよね。



「でも1番のポイントはね、お父さんみたいなとこ!」

「手塚が?まあ確かにそういうとこはあるね…」

「でしょ?だからなんか安心するっていうか…不二くんはお母さんっぽいかも。あ、でもお母さんは大石くんかなー」



一人ブツブツ言ってたら不二くんがお腹を抱えて笑い出した。
…あれ、これってデジャヴュ?










を重ねてえばほら
「君とは上手くやっていけそう」
「…それって喜んでいいの?」




2011 11/15