「そこ、俺の席なんだけど。」

「えっ?…あ、1個ズレてる!」


ごめんねと言ったら男の子は別にと言って肩に背負ってたラケバを置いてから席に着いた。



「あたし名取杏奈。君は?」

「…越前リョーマ」

「越前くんね。越前くんはテニスするの?」

「まあ…」

「よかった!あたし、テニス見るの好きなんだ。いつかテニスコート行く予定だからよろしくね!」



同じクラスで座席を間違えてたのをきっかけにリョーマとは仲良くなっていった。
今考えてみると、ほとんどあたしのマシンガントークで終わってるや…。











「おいコラ越前!屋上で堂々とサボるんではない!」

「別にいいじゃん。英語つまんない。」




リョーマは帰国子女だからなのか英語がとても上手。
発音とか先生と比にならないほどだ。



「つまんないとかじゃなくて!ほら早くしないと鐘が《キーンコーンカーン〜》…え、」

「これで杏奈も共犯〜」



今更教室に戻る気にもなれなかったので、渋々リョーマの横に寝転んだ。



「パンツ見えるよ」

「平気。見えても減るもんじゃないしー」

「…あっそ。」



真っ青の中に浮かぶ白い雲。
えーじ先輩が時々、「あの雲美味そうだにゃ〜」とか言ってるけど、今ならその気持ち、なんとなく分かる気がする。



「もう夏休みだね。」

「……」

「早いなぁー。関東大会が始まっちゃうや。あ、今度こそは怪我無しでよろしく」

「俺そんな柔じゃない」

「どの口がそんなこと…地区では瞼切って、都大会前は石投げられて血だらけで…。処置する身にもなってよね!」



リョーマはいつだって無茶をする。
周りが見えてないのか、自分のことしか考えてないのか。
恐らく両方だとは思うけど、毎回血を流してるリョーマを見ていられるほどあたしのハートは強くない。
その辺もしっかり知っといてほしいものだ。



「杏奈が無茶すんなって言うならもうなんない」

「なにそれ」

「そのかわり、」



俺の試合全部、目逸らさずに見ること。



「いいでしょ?」

「……今のリョーマなんかかっこよかった!」

「はあ?!」

「ファンだったら卒倒だよ!うわ〜残念!相手が悪かったな!」

「…もういい。杏奈ウザい!馬鹿!チビ!」

「んな!チビはリョーマもだよ!」

「うっさい!あーもう!一気に授業出る気失せたんだけど」

「絶賛サボりなうだよリョーマさん」

「今日授業出ない。おやすみ!」










立入止区域
(向けられた背中)
(ごめん本当は)
(ちょっとドキッとした)


20111016

   
      bkm