「リョーマ、」

「ん?」

「お帰り!!」



本当はもっともっと話したいことがあるけど、やっぱり最初はお帰りだよなあと思っていたらリョーマから「ただいま」と返ってきた。



「先輩に呼ばれたの?」

「菊丸先輩がうるさかったから仕方なく。」

「とか言って、本当は楽しみだったんでしょ?」

「…うっさい!」



帽子を深く被り直したリョーマに素直じゃないねと言ったら軽く睨まれた。
まあこのやり取りは今に始まったことじゃない。



「杏奈、」

「なーにー?」

「俺、強くなったから。……大富豪。」

「えっ?そこは普通テニスでしょ!」

「テニスは当たり前。散々負けたから今度は絶対勝つ!」

「…そこで負けず嫌い発動しなくてもいいんじゃ…」



張り切ってるリョーマを見たら、それ以上は何も言えなかった。
リョーマが中1らしいことを言うのはレアなので。
(というかテニス部全員そうだよね)



「夕飯これから?」

「うん。猿山の大将が美味いもの用意しとくから食べずに来いって。おかげで死にそうなんだけど。」

「跡部さんか!それなら一緒に食べれるねー」

「んじゃ隣座ってくんない?」

「…へ?」

「色々聞きたいことあるし。」














マヌケ面で俺の隣を歩く杏奈。
俺が隣に座るように頼んだ訳は簡単。
杏奈と話したかったのだ。
竜崎はよく手紙をくれたけど、杏奈は一度もメールすら来なかった。
だから積もる話はたくさんあるはず。
それにこうやって言っとかないと先輩のとこ行きそうだし。
(特に菊丸先輩。)



「いいよ。堀尾が文化祭でヘマした話聞かせてあげる。」

「…つまんなそうだからいい。」



こうやって杏奈と会話してることで、日本に帰国してきたことを実感する。
久しぶりだ、この感じ。













「ちーすっ!」

「越前?!お前なんでいんだよ?!」

「おチビ!久々だねー!」

「随分遅かったじゃないか。」

「越前が迷っていた確率64%」

「ったく。情けねぇ」

「お前は桃城と海堂と同室だ。食事を済ませたら案内してもらえ。」

「うぃーっス」

「お疲れさま、杏奈ちゃん。」



リョーマが帰ってきて、みんなの笑顔がより一層増した気がする。



「リョーマ、ご飯取りに行こ!」



それはあたしも含まれてたりするんだ。










疾走していく、君の言葉
(またお寿司取ってきたの?)
(さっきは茶碗蒸しだし。そっちこそパスタばっかじゃん)



20111113

   
      bkm