初めての他校でのマネージャーは思った以上にスムーズに行えた。
恐らく幸村さんと柳先輩のおかげだと思う。
事あるごとにこの二人はあたしに話しかけて作業について話してくれたのだ。
一通り終わって30分程練習を見学していたのだけれど、楽しすぎて思わず立ち上がって応援までしてしまいました。
(はっ恥ずかしい…)
仁王先輩のイリュージョンにはかなり驚かされた。
というか怪我したことも嘘だったなんて……慌ててコートへ救急箱と共に入ろうとしたあたしの焦りを返せ!って感じだよ。
「杏奈ちゃん、手塚から伝言。」
「部長から、ですか?」
「入口の方へお迎えに行ってほしいらしいよ。その人連れて食堂に来いだって。」
全く、手塚も俺を使うなんていい度胸だよね〜っていう副音声は聞こえかなかったことにした。
(だって部長が危ないぃぃ!)
「どんな人か分かりますか?」
「知り合いだって。会えば分かるって言ってたよ?」
「会えば分かるって、適当ですね…とりあえず行ってきます。」
「うん。いってらっしゃい。」
「幸村くん、杏奈さんはもうどこかへ行かれたんですか?」
「ああ、……王子様のお出迎え、とでも言っておこうか」
「何じゃ、随分メルヘンな話じゃのー」
さっきの休憩のとき、突然手塚がやってきた。
何やら大切な話があるというので耳を傾けると、「名取を入口へ向かわせて欲しい」という頼みごとだった。
手塚も手塚だよね。自分じゃ待ってる相手を言いそうだ、なんて。
「ねー蓮二」
「どうした?」
「俺って嘘が上手そうに見える?」
「…さあな。」
「なんだい?今の間は!」
まあこの数時間で彼女の信頼を得たのか、何の疑いもされず言う通りにしてくれたので良しとしよう。
「面白くなりそうだなあ。」
「誰が来んのかなあー」
門の前に着いて5分。
寒すぎて帰りた過ぎるんですが!!と思いつつ必死にカイロを振っていた。
手塚部長、この寒さが嫌だっただけなの?!なんてふざけたことを考えていたら、
「薄着すぎでしょ、その格好」
「…え?」
目の前にFILAの帽子を被った少年が現れた。
一ミリも期待なんか
(抓っても痛い…)
(馬鹿にしてんの?てかこれ着ててよ)
(えっ?)
(見てるこっちが寒い)
20111101
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bkm