高々にそびえ立つ白い建物。ここは東京じゃないから、高層ビルなんてしばらく見てないけど、今の私からしたらそれに匹敵するほどの大きさだった、学校は。
学校特有のチャイムを耳にした私はあの場から15分ほどで岩鳶高校にたどり着いた。今日ほどこの姿になってよかったなんて思うはないよたぶん。校内へ入ると昼休みなのか生徒がちらほら歩く姿を見つけることができた。さて、ハルちゃんは何組だったか。
「あれ、うさぎ?なんでこんなとこに居るの?」
一応侵入した身なので物陰に隠れながらハルちゃんを探していたのだけど、失敗したようだ。後ろから声をかけてきた女の子は赤い髪をしている。んー、ネクタイの色がハルちゃんたちと違うなあ…
「でもうさぎは黄色じゃないよね…」
「ちっち!(ねぇ!)」
「!しゃ、喋った?!」
「ぴーかーちゅーちゅ!(あのさ、七瀬遙って知ってる?)」
「え、うさぎ語なんて分からないよ!」
「…ちゅう。(うさぎじゃないんだけどな。)」
女の子はしゃがみ込んで話を聞いてくれたけど、伝わらない。どうしようそろそろお腹が空きすぎて動けなくなりそうなのに…
「ちぃ…(ご飯…)」
「ええ!なんか元気なくなってる!?とっとりあえず屋上まで連れて行こう!」
意識が飛びそうになりながら、その子に抱き上げられてどこかへ向かうことになった。目が覚めたら、目の前にハルちゃんが居たらいいな。
*
「っ… (んっ…)」
「ああ!動いたあ!ハルちゃん動いたよ!」
近くで出された大声にビックリしながら目を開けたら、目の前が黄色でいっぱいだった。ここどこ?てかこの人いま、ハルちゃんって言った?
「気付いたか、きいろ。」
「…ぴっかぁぁああ!!(ハルちゃああああん!!)」
起き上がった時に聞こえた声に安堵した私はそのままハルちゃんにダイブした。今出せる限りの力で抱きついたけど、そんなに力が入らない。
「本当に遙先輩が飼い主なんですね。」
「飼い主というよりは相棒って感じ?」
「こんなうさぎ、見たことありません…」
「きいろはうさぎじゃなくてネズミだ。」
「とりあえずハル、ご飯食べさせてあげたら?きっとお腹が空きすぎて倒れちゃったんだと思うよ、きいろちゃん。」
ああもうほんとあなたが神だったんですねマコちゃん。私、あなたのためならたとえ火の中水の中森の中どこへでもついていきますよほんと。
「ほら、お前の分だ。」
出されたのはハルちゃんのお弁当ではなくてパンだった。周りの様子を見る限りだと、もう食べ終えてるみたいだから、わざわざ買ってきてくれたのかな。
「ぴちゅっ…!(焼きそばパン…!)」
「この子、焼きそばパン好きなんですか?」
「ははっ。ハルの言った通りだね!」
「前にテレビに食いついてたからな。」
「それにしても、どうしてこの子はここに来たんです?先ほどの先輩たちの話ですと、今までここに来たことないんですよね?」
「なにかハルちゃんに伝えたいことがあったとか?」
「どうなんだきいろ」
青い瞳にまじまじと見つめられる。言いたいけどさ、どうやっても伝わらないじゃん?ハルちゃんの帰りが遅くて、最近機嫌がいいから気になったんですーって。
「…もしかしてハル、きいろちゃんに水泳部作ったこと言ってないの?」
「えっ、」
「ちゅっ?!」
ハルちゃんとハモってしまった。ここまですごいのかまこちゃんの読心力…!
「学校ちゃんと行くし帰り遅いし心配したんじゃない?」
「ぴかぴか!(そうそう!その通り!)」
「あ、すごく頷いてる。まこちゃんすごい!」
「なんだか、人間みたいですね、きいろちゃんて。」
頑張ってここまで来たんだねって頭を撫でてくれるまこちゃんの手がとても温かくて幸せです。頑張ってよかった…。
覚醒アドレナリン
「前にハルちゃん家行ったときは居なかったよね?」
「あの日は部屋で寝てた。」
20131006 by休憩