次元を超えて
今日も一日疲れたなーとか、明日も学校かーめんどっ!とか、特に周りの高校生と同じことを考えながら学校からの帰り道を歩いていた一年前の私。強いて言うならば明後日からのテストに頭を悩まされていた。ほんとに、いつもと変わらない、帰り道だった、のに。


「ねぇねぇ、そこのお姉さん。」
「ん?」


声がして、振り向いた。普段ならお姉さんだなんて呼ばれやしないから返事なんかしないけど、幼い声と周りに人が居なかったので振り向いてみた。みた、んだけど、


「…黒猫?」
「そう、黒猫。あのね、お姉さんにちょっとお願いがあるんだ。」
「お願い…?てかなんで喋れんの…」


ここ漫画の世界じゃないよね、うん、どっかの海賊船のさ、タヌキに間違われるあの子じゃないし、てか私の生きているこの世界で動物が喋るとかそんなバナナ。


「いいんだよ僕が話せることなんて。それより、ちょっとついてきて欲しいんだけど、いい?」
「なんかいろいろぶっ飛んでるけど…エサでも欲しいの?」


そう言って黒猫の頭をなでてやろうと右手を差し出したら視界が一転。「交渉成立だね。」なんて声が聞こえた時にはもう私は草原のど真ん中に居ました。しかも心なしか視線が低い。地面近すぎやしないか?


「ちぅ…ちゅう?!」


右手を見て叫んだら、変な声が出た。てか喋れないんだけど、え、なになんなの?!右手黄色いんだけど!


「もう!ピカチュウったらこんなとこに居たのね!相変わらず外が好きなんだからー」


突如現れたお姉さんが私を抱っこしてどこかに向かう。…わたし、電気ネズミになったんですかそうですか。











案外人ってのはピンチな時ほど冷静になるらしい。(私今は人間じゃありませんけどね。中身人間なんで許してください。)
一年前に異次元トリップして人間じゃなくなった私は、まあそれなりに新しい土地で幸せに暮らしていたんですよ。電気ネズミなりに。幸運だったのは私の持ち主がバトル好きじゃなかったことかな。


「…黄色い…うさぎ?」
「ぴっかぁー」


幸せに暮らしてた半年間。いつものように家の前に広がる草原を走り回っていたらまあなんと池にぽちゃんと落ちたんですね。これもよくあることだからお姉さんがお迎えに来てくれるの待ってたんだけど、たどり着いた先は全く違う、目の前には制服を身にまとった男の子が居ました。





これが世界が壊れた音か
もしかして帰ってこれちゃったりして。
相変わらず右手は黄色だけど。


20130912 by魔女


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