青葉城西対烏野の試合は見ていて非常に楽しいものだった。最初は普通に学校対抗だったのに、途中から先輩対後輩だったり元北川がチームを組んだり。引退試合みたいなもんなんだろうなあ。岩ちゃんも徹も、いい笑顔だ。


「新田さん、あの二人と同じ大学行くんですよね?」
「うん。一緒なのは合格してから知ったんだけどね。」
「俺、及川さんとはライバルで居続けたいんで、同じ大学には進まないです。」
「進まないんじゃなくて進めない、だろ?影山馬鹿だもんなあー」
「…黙れ馬鹿日向!」


結局彼が何を言いたかったのか分からず、そのまま烏野の皆さんとはさよならした。今日はこのまま徹の家に岩ちゃんとお泊まり。


「夕飯なにかなー!」
「夕飯の前に風呂だろ。今日は銭湯行くぞ。」
「え、徹の家じゃないの?」
「時間かかるだろ?」
「一人だから嫌なんだけど」
「しょーがねぇべよ?ずっと一人じゃないんだから我慢しろ。」
「ぶーぶー!」


岩ちゃんは徹とは違ってお兄ちゃん的存在。大きな悩みも小さな悩みも、まずは岩ちゃんに話すのが昔からの習慣。あのお店でバイトするのも、なぜか一番に岩ちゃんに相談してた。


「なんかよ、」
「ん?」
「お前が一人で東京行くことになって、結構心配してたけど案外なんとかなったな。」
「そんなに心配してくれてたの?全然連絡くれなかったくせに?」
「俺はどっかの馬鹿と違って放任主義なんで。もっとこう、都会っ子になっちまうかと。」


三年経っても相変わらずサッカー馬鹿だったわ。なんて言って笑う岩ちゃん。この人が愚痴やら悩みやらを聞いてくれたから、サッカー続けてこれたんだよなあ。感謝感謝。


「いーわちゃん!」
「んー?」
「大学、楽しみだね!」


徹やきっとチームメイトには見せないような笑顔であたしに岩ちゃんは笑った。この笑顔が、一番好きだ。







(起きたらきっと春だよね)


20131213 by69


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