あの電話から4か月ほどが経ち、年が明けてとうとうアルバイトが始まった。バイト先はとある喫茶店。ちょっと金額は高校生には高めだが、とても美味しい。そして何より、接客が素敵なのだ。


「今日だけ二人一緒にモジュールを行ないます、大学四年の鈴木です。」
「新田佳純です。よろしくお願いします。」
「黒尾鉄朗です。よろしくお願いします。」


お店に来て初めて知った同期の存在。正直、大好きなお店とはいえ、どんな風に研修を行うのかなんて知らなかったから、すごく緊張している。この人もそうなのかな、とチラ見してみたけど、なんてことない顔して立ってた。てか、でかくないか?


「じゃあまずはコーヒーの歴史を簡単に勉強するね!」


笑顔が可愛い鈴木さんは、とても丁寧にだけど堅苦しくなく解かりやすく、説明を進めていく。どうして社員ではないのに、ここまでお店やらドリンクやらに詳しくなれるのだろう。


「佳純ちゃんはコーヒー苦手?」
「はい…」
「でも大丈夫!あたしも入ったときは嫌いだったから!」


少しずつ緊張がほぐれてきたころに休憩を挟む。せっかくだから二人で休憩時のドリンクもらっといで!なんて言われて、黒尾くんとレジに並びに行く。今日いきなり顔を合わせて同期ですなんて言われたから、まだ学年と名前しか知らない。


「く、黒尾くんは、何飲む?」
「あー、無難にラテ。」
「そ、そっか。」


会話終了。なんていうんだろう、黒尾くんてなんか、見た目が怖いから、話しかけづらいかも。岩ちゃんとはまた違った怖さだ。


「新田は大学どこなんだよ」
「え、桐川大学、だけど…」
「へぇー。ちょっとこっからだと遠くね?」
「でも30分くらいで着くよ。…黒尾くんは?」
「武蔵山。」
「あ、じゃあお家もこの辺、ってこと?」
「一人暮らしする。」


そう思っていたけど、案外話してみるとそうでもなかった。モジュールを終えて二人で駅に向かう短い時間しか話してないけど、そう思った。見た目だけで判断しちゃいけないね。岩ちゃん然り、徹然り。


「またな。」
「うん。ばいばい。」






(ドット色に染まる)


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