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気付いたら夜だった。なんてことは学校も部活も休みな日曜日によくあることだった。昼ごろに起きて誰も居ないリビングで朝ご飯と昼を兼ねた食事をとってそのあと好きなことをする。基本家は出ない。


「忘れ物ないー?」
「多分ない!あったら配達でよろー」
「え、さくらどこ行くの」
「今日から蔵くん家に住むって言ったじゃん。」
「今日だっけ?忘れてたわー。」


そんな感じで、気づいたら引っ越しの日だった。いつか一人暮らしがしてみたいと五月蝿いあたしに、母親が提案してきた従兄とのシェアハウス。共同生活と言うと父親がねちねち五月蝿いのでシェアハウスとあたしが名付けた。これで生活していく大変さを実感してこいとのこと。でも多分、蔵くんが居る時点でその大変さは激減してると思うけどね。あの人昔から真面目で出来る子だったじゃないですか。スポーツも勉強もできるって、お母さん貴女散々あたしに言ってじゃないですか!


「寂しくなったらメールでもしなよ」
「別に。つか俺が来年家出るし。」
「寮生活出来るように今から家事全般教わっときなよ。その前に野球で活躍しなきゃ地方の強豪校なんか行けないけどね。」
「その言い方ウザい。」


憎まれ口しか叩かない絶賛反抗期中の弟に別れを告げて、リビングから思いっきり手を振ってる母に笑って、あたしは小学校一年生から十年間過ごしたマンションの一室を出た。


*


あたしは昔から幼稚園や学校の先生に「しっかりした子で手がかからなくて助かります。」と言われてきた。度の過ぎた我が儘は言わないし、自分より小さい子が居たら面倒見るし、何より物分かりがいい。大人はそんなあたしを落ち着いた子どもと言う。実際は、我が儘を言わないのはお母さんに後で伝わったときに怒られるのが怖いからで、小さい子の面倒を見るのはちびっ子と遊ぶのが好きだから、物分かりがいいと思われるのはきっと昔から大人に交じってそれぞれの所属する社会への不満や愚痴を散々聞いてきたから大人を見るとこの人もあんな風に疲れてるのかな、なんて思うから先生にはそんな風に見えるんだろう。簡単に言えば、馬鹿にしてるんだ。あたしは、大人を。

大人を馬鹿にしているけど、いつかは自分も大人になる。あんな大人になりたくないと思いながら日々を過ごしているけど、本当は自分がああいう大人に一番近いとこに居るんじゃないかと思って仕方ない。すべてを知ってる風に、相手を見下すように、人を斜め上から見てる自分が、大嫌いだ。

だから、


「お久しぶりです。」
「おおーさくらか!久しぶりやんなー」
「今日から一年間、よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしゅうな。ほな部屋案内すんでー」


高校を卒業するまでに、自分の気持ちだけで突っ走って素直でどんな人も受け入れられる心の大きな人間になりたい。


真実は笑顔の裏側

20130313 by秋桜

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