「ねー白ちん、今日室ちんの誕生日なの知ってたー?」
「知ってるよー福井先輩が言ってた!」
「プレゼントあるの?」
「かぼちゃのケーキ作ってきたよ。」
「何それズルい!オレんときかぼちゃなかったじゃん!」
「だって明日ハローウィンってゆーさ、ね?」
「オレも食べたいー」
「…そう言うと思って持ってきたよ」
スクバからタッパーを取り出し紫原の前に差し出す。
ふたを開けてじっと見た後、彼は喜んでケーキを食べ始めた。
「白ちん、昼に室ちんと空き教室でお弁当食べる約束してんだけどさ、行ってくんない?」
「え?」
「これくれたお礼ー」
今日は私の思い人である氷室先輩の誕生日。
学年が違うからなかなか会えないけど、部活が一緒だからその時にでも渡せればいいなって思ってたのに。
なんて幸運!
「紫原の分も作ってきてよかった…」
「感謝してよねー」
「あれ、白井?」
紫原に言われた教室へ向かえば氷室先輩が居た。
当然だよね、氷室先輩約束破るような人じゃないし。
「敦は一緒じゃないのかい?」
「えっと、紫原はちょっと来れないみたいで…」
「ふーん…じゃあ、一緒に食べよっかご飯。」
40人は入れる教室にたった二人きりでお弁当を食べる。
向かいあってお弁当とかカップルみたいじゃん…。
ドアについてる窓越しに生徒が見えるたびにドキドキする。
「なんか今日の白井は落ち着きがないね。」
「そ、そうですか…?」
「うん。だってここに来てから水筒飲むの、もう10回目だよ?」
そう指摘されていつも以上に軽くなってる水筒に気づいた。
てか今も飲もうとしてたよ…恥ずかし…!
「白井、俺今日誕生日なんだ。」
「知ってます!だからケーキを!…あ。」
「ふふっ。俺ね、好きな子と二人でお弁当食べるって憧れてたんだ。」
「私もそれ、…え、氷室先輩いま、なんて…?」
「んーと、つまりね?誕生日に白井と一緒にご飯食べれて嬉しいなってこと。」
ケーキ食べてもいいかい?
「一口ちょうだい」
(敦もやってくれるなあ)
(何か言いましたか?)
(ううん。あ、ほっぺにクリームついてる。)
by魔女 20121030