日向先輩
「カントクー、女バレの先輩が呼んでます!」
「女バレ?…ああ、了解!」


いつものように朝練してたら、カントクが誰かに呼ばれたらしく入り口のほうへと走ってった。
そこには福田の言うとおりバレー部の先輩が居て、その人はカントクより10p近く背が高かった。
さすがバレー部。


「何ボーっとしてんだ火神!」
「あっいや、スンマセン」





昼、弁当が足りなくて食堂に来た。
今日は27日ではないので購買は空いてて難なく買えたんだけど。


「お前それで足りんのか?」
「うん。あとカフェオレ欲しい」
「それじゃあ500円どころか300円も満たさねぇよ…」
「だって料理部がマフィンくれたんだもん。順平オーバーしていいよ」


どこか聞き覚えのある声がすんなーと思って横を見ると、そこには主将と今朝の女バレの先輩が居て、かなり驚いた。
いや別に主将だってカントク以外の女子と話したりはすると思うんだけど、二人の会話と主将の手に握られてる千円札が違和感出しまくりなんだよな。


「ん?あ、火神クンだ」
「へっ?」
「おー火神じゃん、黒子は一緒じゃねーの?」
「一人っすけど…つか名前なんで知ってるんだ?、ですか?」
「順平やリコからちょくちょく話聞くからさ。ほんとに面白い敬語使うね」


先輩の手の中には二人分のジュース。
主将手にはパンの入った袋。
この二人、いったいどんな関係なんだ…?


「もしかして火神クン、知らない感じ?」
「そーいや言ったことねぇな。1年に会うことねぇし」
「まーそうだよね。…火神クン」
「あ、はい」
「はじめまして、日向瑞希です。順平の双子の妹で女バレの主将ね」
「…双子!?」
「んーと、これでなんとなくわかる?」


カーディガンのポッケから眼鏡を取り出してかける先輩。
あーなんとなく、


「似てる、気がします。」


これが日向先輩との出会いだった。





とある土曜。俺たちはなぜか女バレの試合を見ている。


「なかなか迫力あんな」
「アタックとか早すぎて怖いんだけど!」
「火神君、ちゃんと応援してください。」
「してるわ!お前よりは声出てるから!!」


事の始まりは30分ほど前。
カントクが突然「今日は女バレの試合見に行くから」と言い出した。
行くつっても隣の体育館だけど。


「日向妹って主将じゃないの?なんで1番?」
「バレーはあんまり背番号に意味はねぇんだってよ」
「キャプテンは番号の下にマークがついてればいいの」
「あ、また日向先輩のスパイク!」


コートに居る唯一の知り合いである日向先輩は、さっきからガンガンスパイクを打つ。
まるで主将の3Pシュートのように。


「ベンチ声が小せぇよ!もっと声出せ!!」
「「はいっ!!」」
「コートもやる気見えねぇよダァホ!」
「「はいっ!」」
「次のセットもぜってー取んぞ!」
「「おう!!」」

「もしかして日向先輩もクラッチ入るんすか…?」
「入る入る!日向と同じくらい口悪くなるから」
「ほんとそっくりですね」
「あんま認めたくねぇけど…まあ似てる。」


渋々うなずく主将。
大きな声援に包まれる日向先輩の背中は、主将にそっくりだと思った。





あいつがキレたら地球半壊するぞ
(顔は全然似てないよなー)
(結構美人じゃね?彼氏とか居ないの?)
(試合見て一気に冷めるだろぜってー)
(まだしばらくは瑞希の隣は日向君でしょうね)


20120812 title by雲


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