「あんたのタイプってさ、優しくて大人っぽくて引っ張ってくれる人じゃなかったけ?」
「そうだけど」
「じゃあなんで青峰と付き合ってんのよ!」
「あー、なんてゆーか、成り行きで」
そう応えると「はああ?!」とこれまた大きな返事が返ってきた。
うん注目浴びるからやめよーか友人よ。
「デートとかどこ行くの?」
「ストバス。それかスポーツ用品店。」
「それってデートって言わない…」
呆れたのか友人はため息をひとつ残して自分の席を去って行った。
桐皇に入ってもう一年が経つ今、あたしは晴れて二年生になる。
「おい」
「あれ大輝?珍しいね教室に居るの」
「今日ぐれぇ出ねーとさつきがガミガミうっせぇからな」
「確かに。あたしも一緒に怒られるからその方が助かるー」
「んま今年はもーちょい出るつもり」
「なんで?」
「お前と同じクラスだし、良も居るからメシが食える。」
目の前でうだうだ言いながら席に座る大輝とは中学からの仲で、あたしの彼氏でもある。
気づけばもう二年が経ちます。
時の流れって早いよね、ほんと。
「今日男バスってオフ?」
「んー多分」
「じゃあ駅の近くのストバス行こ!」
「昨日もなんだかんだ行ったじゃねーかよ」
「だって大輝とバスケできんのストバスだけなんだもん。絶対行くからねー!」
「はいはい。んじゃ一応さつきに確認してくるわー」
初めて彼に会ったのは男バスの体育館に足りないボールを取りに行ったとき。
帝光中は女バスもそこそこ強くて男子とは別の体育館があったんだけど、時々ボールが入り混じるんだよね。
初対面の大輝はただのバスケ馬鹿だった。
付き合い始めたのは中三の春。
キセキの世代と呼ばれる彼らが才能を開花し始めている頃で、大輝はもう既にバスケに対するやる気を失っていた。
あんときの大輝は大嫌いだったなー。
じゃあなんで付き合ったかって?
言ったでしょ、成り行きって。
大輝は知ってる、あたしの理想に自分が何一つ当てはまってないことを。
その逆も然り、だ。
だってあたしは堀北マイちゃんやさつきちゃんのような大きな胸の持ち主ではない。
けれどあたしたちは、一緒に居る。
「ね、このあと駅前のクレープ屋さん行こうよ」
「…んなとこ行くの初めてじゃね?」
「たまにはいいかなーって」
「太んぞ」
「またバスケやればプラマイゼロだから大丈夫ー」
多分あたしたちは友情の延長線上にある恋人なんだと思う。
お互いバスケが大好きで、なんだかんだでバスケから離れられない。
友達が恋人に発展した理由なんて簡単。
居なかったんだ、自分の気持ちを受け入れてくれる人が。
「あたし桐皇選んでよかったよ。」
「なんだよ急に。」
「桐皇入って、やっと自分がバスケする意味を見つけた。それにまた、大輝が笑ってバスケしてるとこが見れた。」
誘ってくれてありがと。
そう言うと突然ゴールに向かってドリブルしてく大輝。
あ、ダンク。と思ったらシュートしたボールを拾って小さく笑った大輝と目が合う。
「1on1やろーぜ」
理想のタイプには当てはまらないけど、大輝が彼氏で十分幸せです。
理想じゃない君がすき
20120806
企画「慈愛とうつつ」さま提出