季節感を大切に

「あー早く雨降んないかなー」
「なんで?」
「部活が室内練になるじゃん。」
「そっか、外部活は雨降るとメニュー変わるんスね。」
「体育館が恋しいよー」
「んじゃなんでテニス部なんて入ったんスか!」
「その場のノリ。」


至極めんどくさそうに返事をする彼女は二年で同じクラスになった白っち。彼女は俺と同じように中学から雑誌でモデルをしていて(読者モデルってことを強調してくる)、女の子たちによく二人で並ばされることが多かったから、仲良くなるのにそう時間はかからなかった。


「九月って地獄だよね。」
「そうっすか?暑さが和らいできて過ごしやすいじゃん」
「昼間は相変わらず暑いじゃん。なのに仕事で長袖にタイツ履かされて…もっと季節感堪能しろよ日本人だろって思う。」
「モデルしててその発言ってどーなんスか…」


彼女はかなりのマイペースだ。周りに流されないし、考えを合わせようとはしない。みんなと一緒を好む女の子には嫌われやすいけど、雑誌ではそんな白っちのスタイルに憧れてるファンが多くいるって書いてあった。確かに、ファッションセンスも独特だ。


「そーいや今度、二人で撮影あるね。」
「あれでしょ、ジャージの着こなし方。高校生向けの雑誌だったよね。」
「ジャージに着こなしも何もないと思うんスけど、どうする?」
「いつも通りに着ればいいんじゃない?さすがに足元チャックのは考えるけど。」
「あのキュっとしたやつか〜あいつは強敵。」
「てかそれも長袖じゃん。うわーいやだー」


部活後って設定で半袖着よ。っと呟いて立ち上がる白っち。ぶーぶー言ってた割には真面目に部活に向かうようだ。マイペースで自分の世界を形成してるけど、目の前にあるものには全力で立ち向かう。勉強も、部活も、仕事も。その姿を、オレは尊敬してる。


「白っち!その撮影終わったらご飯行こう!!」
「いいけど、その二日後に黄瀬はセミヌード撮るんじゃなかった?」
「あっ…」
「…焼肉行こうねー約束だよー」
「ちょっ!酷いッスよ白っちぃいいい!!」







20130906


prev next

bkm