「なーにしてんの?」
「文化祭のアンケートの集計だよ。高尾君は部活?」
「おー。バッシュ忘れて取り来たんだよ」
人のいない教室は声がよく響く。
普段あまり高尾君と話したりしないけど、別に仲が悪いわけじゃない。
2年間同じクラスだし。
「てかさ、それ一人でやんのキツくね?永田は?」
「勉強あると思って先に帰ってもらったんだ。あの子早慶狙ってるみたいだしさ、忙しいだろうなーって。」
「ふーん…」
納得いかないって顔をしてる高尾君。
彼は優しいから、きっと委員なのに仕事をしない永田君に怒ってくれてるのかも。
「別に大変じゃないからそんな心配しないで?」
「え、オレそんな顔してた?」
「うん。…無自覚なの?」
高尾君はモテる。
男女誰にでも優しくて元気で、バスケがとても上手くて勉強もそこそこ。
バスケ部に居ると小さく見えるけど、身長は平均だと前に言っていた。
あたしからしたら高尾君も十分大きいんだけどね。
「んじゃ一緒に帰ろうぜ」
「えっ?今の流れでなんでそうなったの?」
「いーじゃんいーじゃん!部活、今日は6時で終わりだから待ってて!」
そう言い残して教室を出て行った高尾君。
待っててって…一緒に帰るって…
「っ〜!!」
猛スピードで顔に熱が集まる。
本人の前では至って普通だったけど、一人になった途端すごく恥ずかしくなった。
女の子ってね高尾君、優しくされたらもちろん、ちょっと特別扱いされただけで、嬉しくて舞い上がっちゃうような生き物なんだよ?
「…集計、やろう。」
赤く染まった頬に気づかぬ振りしてシャーペンを握った。
黄昏純愛事情
(走ってもないのに早くなる脈)
(オレ、白井のことこんなに好きだったっけ)
by花畑心中 20121030