赤司君と近くの喫茶店に入って早一時間。この間に彼は自分のことをいろいろ話してくれた。
今は個人塾を経営する社長だそう。高校は京都で、中高ともに1年の時からキャプテンだとか。人望のある人なんだな。


「そうしたら、次は最近の由実について話してくれないかい?」
「え、私ですか?」
「僕が随分話したからね。それと敬語禁止。」


頬杖をついてこちらをじっと見つめてくる赤司君。なんか、見定められてるみたい。


「えっと…4日前に青峰君と火神君に会った、よ。」
「そう。なんか分かった?」
「私ってバスケ馬鹿だったのかな…って。部屋にそれらしきものないから、初めて知ったよ。」
「そういえば就活の時に、学生時代の思い出は全部しまうって言っていたよ。」
「ほんと?じゃあどこかにあるのかな」
「他には?紫原と緑間にも会ったんだろう?」
「うん。紫原君のイチゴムースがすごく美味しくてね、もらって帰ってきちゃった。それから、緑間君の勤め先がね、私の入院先と一緒だったんだ。」


すごい偶然だよね、と言ったら赤司君はそうだねって小さく笑った。


「最後に一ついい?」
「なに?」
「今、好きな色は何色?」
「好きな色?んー、黄色、かな。」
「!!それはどうして?」
「荷物に黄色が多くて黄色が好きだったのかなーって。それに、なんだか落ち着くの。」


リップとかイヤホンとか。些細なところに黄色がある。
そういえば病室に飾られてた花も、黄色が多かった。赤司君はどこか安心したように「由実は黄色が一番似合うよ」だなんて言ってくれた。やっぱり、黄色が好きだったんだね、前の私も。







あのあと、赤司君が家まで送ってくれた。お母さんは赤司君をすごく信頼してるみたいだ。


「こんなとこにしまってたのか。」


クローゼットの一番奥に押し込まれてたショーケースの中にそれはあった。学生時代の思い出。


「SEIRIN…わっ、ほんとにバスケ部のマネージャーしてる」


写真の右端でピースして笑ってる自分が居る。隣は確か、中学も一緒の黒子君て子だ。


「あれ、写真?」


卒業アルバムの寄せ書きのページに一枚だけあった写真。みんなバスケ部みたいだけど、みんなジャージが違う。


「カラフルだなー」


青峰君、火神君、緑間君、紫原君、赤司君。まだ会ってないけど黒子君、桃井さんはわかる。分からない人はお母さんから話を聞いてない人だ。一気に話したらパンクしちゃうから、とりあえず一番親しかった人たちだけって。


「この人、は…?」


青いジャージに黄色。私の横に立って目が細くなるまで思い切り笑ってる男の子。彼は一体、誰なんだろう。



「お母さん」
「ん?どうかしたの?」
「この人って友達?」


さっきまで見ていた写真を母にだし、黄色の彼を指差す。少し驚いた顔をして「そうね、友達よ」と答えた。


「この子は、赤司君たちとは違うの?」







いつも不変の愛に怯えてる
(この子は黄瀬君って言ってね?モデルなの)
(だけど、彼も赤司君と同じ…あなたの大事な人よ。)


20121111