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「桃ちゃんを一人にするのはほんとに心配なんだけど…」

「大丈夫、だよ!お母さんたち、居るもんっ!」

「んー、まっそうだよね。じゃあまたあとで!」



千代ちゃんは颯爽と階段を昇っていった。
今日は開会式で、千代ちゃんは声楽隊なので別々の場所に居ます。
あたしも歌えたら良かったんだけど、最近はマネジの仕事よりも選手で居ることの方が多いからね!!



「たら、あなたがマネージャーの葉山さん?」

「はい!お、おはよう、ございます!!」

「ふふっ可愛らしいわねぇ、どうも花井の母です。いつもありがとうね?」

「いっいえ!花井っくんにはクラスでも、お世話に、なってます」

「あの子世話好きだからねぇ〜あ、始まるわ!」



花井くんのお母さんが言ったと同時に行進の音楽が流れてきた。
奥の方から西浦高校が入場してくる。
今までTVで見ていたこの場所に自分が居るのが不思議で、
だけど、彼らを見つけたら、これは夢なんかじゃないんだって思った。



「始まるんだ、ね」



西浦高校野球部の、夏が。

















(学ラン、かっこいいな…)

あたしの視線の先には9組で今回援団を買って出てくれた浜田くんが居る。
金髪だし背高いし留年してるし、絶対怖い人だ!って決めつけていたけど



「よーす、おつかれー」

「別にいーんだけど、帽子被んのなんかわざとやってね?」



泉くんと話してるカンジからして、そんなことないみたい。
そもそも援団をやってくれる人なんだ。
味方なんだもん!!



「なんか嬉しそうじゃん葉山」

「そ、そうかな」

「顔がふにゃ〜ってなってるぜ!」

「何かあったの?」

「…学ラン、かっこいいな、って」

「ああ!浜田見て思ったのね!」

「うん。それに、味方なんだって思ったら、なんか…ね」



嬉しく、なったの。

ちょっぴり恥ずかしくなって俯いたら、水谷にお前も乙女みたいなとこあんだなーって言われた。
(うわっなんかムカつく…)



「そんなこと言ったら、明日は200人も味方がいんだぜ?」

「嬉しそうに笑うどころじゃなくなっちゃうね」

「大口開けて笑ってるかもよ?ギャハハハ!って!!」

「ひたすらにやけてるかもしんないよ!」

「見たくねぇな、そんな葉山…」


「葉山ー!って、どうした?」



みんなにすき放題言われてるとこに、救世主阿部くんが登場しました。









―同じ場所には居なくても―
(阿部くん!!みっみんなが、酷い!)
(はあ?…お前ら何やったんだよ?)
((まさか葉山が阿部に助けを求めるとは…))



2011 10/28
提供・星屑


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