▼28
君の輝きが、また私を悩ませる
努力のかいあってか、野球部は誰ひとり赤点を取らなかった。
あたしも数学で72点、英語で80点がとれたので満足してる。
そして今日はなんと、甲子園をかけた戦い――埼玉県大会――の抽選会である。
「三橋と葉山はARC知ってるか?」
泉くんの問いに二人でぶんぶんと頭を縦に振る。
そして栄口くんに言われるがまま後ろに振り返ってみた。
「でっでかい…」
「通路側の太田川てのがタテもヨコもデカくてさ。アレで一年なんだって!」
「中学時代から県内じゃ有名なヤツだよ。関東の準決、神奈川1位相手に3回投げてノーヒットだったんだってよ。」
「へぇー」
「神奈川1位、か…」
ボーイズに入っていたから、いくら神奈川出身とは言え、詳しくは知らない。
(どこが強かったんだろ?)
「去年の優勝校、かあ…」
花井くんがクジを引いた時、まさか!と思ったけど、夢ではなかったみたい。
(ほっぺ抓っても痛かったから)
「なんだよー桃も弱気か?」
「違うよ!なんか、こう…」
「ん?」
「っ、スッゴく、ワクワクするの!」
「ははっ!だよなー。俺もワクワクだぜ!!」
「(葉山って田島に似てんの?)」
「(てか大物だよな、アイツ)」
「すげぇーな。俺まだちょっと不安なのに」
「…勝つだけ、だよ!」
「え?」
「西浦(ウチ)は、勝つだけ!練習して、努力して、桐青に勝って、」
みんなと、笑いたいよ。
「お母さーん。明日から5時集合だから、4時半に家出るね?」
「…あんた、正気?」
「うん。桐青に勝つ為だもん。あ、ムリだったらお弁当はなんとかするよ?」
「いいわよ。どうせ隼人も明日から朝早くなる!とか言いそうだし。」
「姉ちゃんのガッコー、どこと当たったの?」
「桐青高校。知ってる?」
「…去年、甲子園行った?スゲーじゃん!」
「あたしもワクワクしてるよ!あ、素振り終わったの?」
「あと少し。お茶飲んだらもっかいやる!」
―真夏の空、一番星―
(みんなの努力を)
(”カタチ”で証明、したいんだ)
20110928 提供:魔女
←→
[ 29/37 ]