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君の輝きが、また私を悩ませる




努力のかいあってか、野球部は誰ひとり赤点を取らなかった。
あたしも数学で72点、英語で80点がとれたので満足してる。

そして今日はなんと、甲子園をかけた戦い――埼玉県大会――の抽選会である。



「三橋と葉山はARC知ってるか?」



泉くんの問いに二人でぶんぶんと頭を縦に振る。
そして栄口くんに言われるがまま後ろに振り返ってみた。



「でっでかい…」

「通路側の太田川てのがタテもヨコもデカくてさ。アレで一年なんだって!」

「中学時代から県内じゃ有名なヤツだよ。関東の準決、神奈川1位相手に3回投げてノーヒットだったんだってよ。」

「へぇー」

「神奈川1位、か…」



ボーイズに入っていたから、いくら神奈川出身とは言え、詳しくは知らない。
(どこが強かったんだろ?)











「去年の優勝校、かあ…」



花井くんがクジを引いた時、まさか!と思ったけど、夢ではなかったみたい。
(ほっぺ抓っても痛かったから)



「なんだよー桃も弱気か?」

「違うよ!なんか、こう…」

「ん?」

「っ、スッゴく、ワクワクするの!」

「ははっ!だよなー。俺もワクワクだぜ!!」

「(葉山って田島に似てんの?)」

「(てか大物だよな、アイツ)」

「すげぇーな。俺まだちょっと不安なのに」

「…勝つだけ、だよ!」

「え?」

「西浦(ウチ)は、勝つだけ!練習して、努力して、桐青に勝って、」



みんなと、笑いたいよ。












「お母さーん。明日から5時集合だから、4時半に家出るね?」

「…あんた、正気?」

「うん。桐青に勝つ為だもん。あ、ムリだったらお弁当はなんとかするよ?」

「いいわよ。どうせ隼人も明日から朝早くなる!とか言いそうだし。」

「姉ちゃんのガッコー、どこと当たったの?」

「桐青高校。知ってる?」

「…去年、甲子園行った?スゲーじゃん!」

「あたしもワクワクしてるよ!あ、素振り終わったの?」

「あと少し。お茶飲んだらもっかいやる!」










―真夏の空、一番星―
(みんなの努力を)
(”カタチ”で証明、したいんだ)


20110928 提供:魔女


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