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見える、見えない、そんなの、見えたって仕方ない。
「田島!見とけ!」
氷オニを始めた田島くんに阿部くんは叫んだ。
その直前、なんとなく榛名さんがこっちを見た気がするんだけど、(気のせい?)
「う、わ、…」
阿部くんが見とけと言った球は物凄い早さでキャッチャーミットへ向かい、はじいた。
(…見えてない?)
「何だよォ、1球だけェ?」
「みたい、だね。」
たった1球だけ”すごい球”を榛名さんが投げて武蔵野は勝利をおさめた。
「さて、帰ろっか。」
「2試合目は観ないんですか?」
「あの辺が限界だからね。さ!ひとっ走りしたらお昼だよ!」
「んじゃ行こっか桃ちゃん。」
「うん。………ん?」
千代ちゃんと二人でジャグを持って立ち上がったとき、ふいにベンチに居る選手が目に入った。
「葉山?」
「!あ、っと…次って、どこ?」
「次は春日部とね、確か…」
千代ちゃんが千代ノートで調べているのが待ってられなくて、あたしはスタンド席の階段を1段飛ばしで駆け降り、フェンスにしがみついた。
(…絶対、そうだ!)
一塁側のベンチに居るそっくりな顔の二人から目が反らせない。
多分間違いない。
あれは…
「葵くんと、涼くん…。」
「知り合い?」
「入口で、話してた人、だよ。」
「それってもしかして…?」
「あたしの、ライ、バル。」
突然フェンスにしがみついた葉山は2、3分ほどで元に戻った。
何も無かったかのように歩いてく彼女に戸惑いを隠せないのは俺達だった。
「葉山のライバルは、春日部のバッテリーっつーことか?」
「っぽいな。」
「ベスト8に来るバッテリーがライバル、かあ。何か、葉山って見掛けによらず大物だよね。」
「かなり小心者っぽいのに」
こっちで話をされてる当の本人は嬉しそうにしのーかと話してる。
(あの顔からして、野球の話だな)
「まあいろんな意味でよ、」
「「 ? 」」
「葉山が西浦(ココ)に来たの、俺達にはラッキーってことじゃね?」
阿部は悪戯っ子みたいな顔で笑った。
―青空は誰に味方する―
(あの笑顔の裏に隠された強さは)
(いくつの”負け”を経験したのだろう)
2011/9/12
提供魔女
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