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嫌よ嫌よも、好きのうち?
「俺が今日オフで良かったなァ?」
「…ゴメンナサイ」
「もしお前が弁当を忘れさえしなければ?わざわざ県営へ来ることもなかったし?友達と遊ぶ時間が削られることもなかったんだけど?」
「っだから!ゴメンって言ってんじゃん!」
ゆっくり観戦していた矢先、突然後ろから肩を叩かれた。
そこには家の外では絶対に会いたくない人――隼人がお弁当を持って立っていた。
「つーかこの上のジャージ俺のじゃん。ぶかぶかー」
「お母さんが引き出しに入れたんだからいいでしょ。ていうか早く帰ってよ」
双子の兄は正直言って苦手だ。
嫌いとかそんなんじゃなくてあたしのこと、全部分かってるような感じとか(まあ双子だから仕方ないんだけど)すぐにからかってくるとこが、苦手。
「…誰コイツ」
「うわっ!あっ阿部くん…」
阿部くんの声にびっくりして振り返ってみたらみんながこっちを不思議そうに見てた。
モモカンやシガポまでこっち見てて、恥ずかしいったらありゃしない。
「(自分で言ってよね、)」
「ん。はじめまして、桃の双子の兄の葉山隼人です。武蔵野でサッカーやってます。」
「武蔵野?」
「あそこのサッカー部さっき強ぇって水谷とか言ってたよな?」
「あ、みんな知ってるカンジすか?んじゃ、俺の名前覚えておいてくださいね〜!」
「は?」
「おれ、夏からレギュラー入るつもりなんで!じゃあな、桃」
「…葉山の兄貴さあ」
「水谷!兄じゃ、ない!」
「ははっ。葉山、隼人くんと仲悪いの?」
「…嫌いじゃ、ないけど、苦手。あの性格が。」
「「((案外、似てると思うけどなあ))」」
隼人が居なくなったあとも、話題はヤツだった。
(……うぅっ)
「ひとつ気になったんだけどよぉ、なんでお前はサッカーにしなかったんだ?」
「確かに!双子なんだから一緒のやればよかったのに!!」
―誰かに認めてもらいたくて―
(私たちは二人で一つの存在で)
(だけど一人一人を見て欲しくて)
(決めたんだ、離れることを)
2011.09.08
提供:星屑
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