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誰よりも、何よりも、野球が1番だったから。
「んな、あれって葉山かなァ?」
「え、どれ?」
田島があれ、って言って指さした方には二人の男子(恐らく高校球児)と一人の女子が居た。
「そうじゃね?だってエナメルに西浦(ウチ)の帽子ついてっし。」
「やっぱり!うし、行ってこよーっと!」
「ちょおい!田島ぁ!!!!」
俺の声は虚しくも風を切るだけだった。
多分葉山であろう女子はものすごく楽しそうに話してる。
(ウキウキしてるっつーのかな)
「なんか今朝の葉山、いつもと違ったよな!」
「それ俺も思った!今まで聞いたことないくらいデケぇ挨拶でグランド入って来たし。」
「俺なんて”はいどうぞ!”ってドリンクもらっちゃったぜ?」
「ここに来るのも張り切って出てったよなあ。昨晩ので何か、吹っ切れたカンジ?」
「みんなー!三塁側だってよ!早く行こうぜぇ!!」
「…ま、イイ意味で変わった。ってことでいいんじゃね?な、泉?」
「そうだな!…オイ田島ぁー、走んなー!!!!」
「ねぇ、さっき誰と話してたの?」
「?さっき?」
「ほら、入り口んとこでさ」
先程席を取った所へ案内して各自席に着いた。
あたしは沖くんと泉、くん(未だ呼び捨てにできない)の間に座ってます。
「ああ!葵くんと涼くんは、小学校のとき、同じチームで、私の…」
そこで言葉が詰まる。
こんなこと、みんなに言っていいのかな。
「葉山、俺たち、葉山が何言ったって馬鹿にしたりしないから、ね?」
「ああ。」
「…っ、私たちの憧れっで、それで、ライバルのバッテリー、なんだ。」
そう言ったらみんなニッコリしてくれて、そこから段々話は逸れていった。
「浦総は甲子園行ってからずっと強いよな。」
「武蔵野は野球よりサッカーだよな」
武蔵野ってどっかで聞いたことあるよーな…。
それも、ものすっごく身近で。
「そうそう。サッカー部の応援したくて武蔵野行く女いたよ」
「あー居るよなー。」
「武蔵野ってやっぱりサッカー強い?」
「(やっぱり?)ああ。どんくらいの成績かはわかんねぇーけど、結構強いと思うぜ?」
「武蔵野知ってるの?」
「あ、う、えっと…うん。」
知ってるというか、ものすんごい身近な人がそこのサッカー部に所属してます。
なんて言えなかった。
―モラトリアムだと分かってよ―
(なんかあの顔思い出したら寒気が…)((さっきまでの勢いはどこへ?))
桃→沖
2011.08.29
提供:魔女
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