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脳裏に描いてたものが、現実となる




あれからすぐ、DVD鑑賞会みたいなのが始まった。

炎天下の中、今より15cm近く短い髪の葉山がマウンドに立って、バッターに向かって何十球も投げていた。
そのどれもが力強くて、少し身震いがする。
(胃が痛くなってきたな…)

世の中にはもっと凄いピッチャーがゴロゴロ居ると思う。
だけど、こんなにも一球一球に気持ちが込められているような球投げれる奴、そうそう居ない、と俺は思った。




「ねぇ、桃ちゃん。」

「 ? 」

「もう一度、マウンドに立ちたくない?」

「えっ…?」

「「はあっ??」」




モモカンが可笑しなことを言った。
マウンドに立ちたいなんて、あの日からずっと願ってたことだった。
あの甲子園で全国制覇を成し遂げた時から、ずっと。
だけど同時に、それは無理なことなんだと思い知らされる。
ここは女が来る場所ではないんだと。



「監督、コイツは「女、でしょ?そんなこと私だって分かってるわ。」

「じゃあ何で……」

「高野連は女子の公式戦への出場と同じ練習をすることを禁止してる。じゃあ、練習試合はいいんじゃないって思わない?練習だってこの合宿みたいに打撃投手としてなら問題無いでしょ?…それより、

私は桃ちゃんの気持ちを知りたいな。」



優しく微笑んで、モモカンはあたしにそう言った。
やっぱり、この人には全部見透かされてる気がする。




「…あたし、もう一度…、ボール、…握りたい、です。」


お願いだから、もう一度、彼らと同じ夢を見させてください。








―白が随分と変わりたがっている―
(後ろばっかり見てたくない)
(あたしだって前に進まなきゃならないんだから)


※ボーイズの全国大会は甲子園で行われます。
2011.08.28
提供:魔女


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