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全部含めて”野球”なんだ。




「みっ、はしくん…」

「崩れる。伝令!西広くん!」

「はっはい!」



7回の裏、織田くんに三塁打を、畠くんにホームランを打たれた三橋くんはマウンドでうずくまってしまったが、すぐに立ち上がった。
彼の投球に対する執着心は私たちが思っている以上に大きいようだ。
(それより、阿部くんが…)
そう考えてるうちに交代が審判によって告げられる。
三橋くんは、ベンチに戻って来なかった。



「1、2、3番!」

「「「はいっ!」」」



次は1番の栄口くんから攻撃が始まる。
この状況で1番から。
点を入れる為にも、この回はよりいっそう気を引き締めていかなければ。



「葉山、」

「?」



声のする方を向けば、防具をつけたままの阿部くんが居た。



「三橋のこと、頼んだ。」

「…私?」

「今の三橋の気持ち、お前が1番わかってやれるだろ。」



阿部くんの言う通り、ホームランを打たれた時の投手の気持ちはよくわかる。

同い年が相手でも、体格に恵まれてパワーのある選手なんてのはごまんといる。
そんな中でホームランを打たれないようにするなんて、不可能に近い話だ。



「三橋くん」

「……葉山、さん」

「三橋くんは、一人で試合、してるの?」



膝を折って同じ目線で話す。
あなたは一人じゃないんだよって伝える為に。



「オイ」

「「!!」」

「無死満塁だったのに1点しか入れらんなかった。」

「(え)」

「4番のくせにカッチョワリーけど、ベンチに帰れないことはねーよ。」
「お前、力全部出してんだろ!守ってりゃそれはわかるから、一緒にベンチ戻ろうぜ!」



それでもなかなか動かない三橋くんを、あたしと田島くんで担いでった。



「野球は、みんなで、するんだよ!」

「ふへっ?!」

「誰も、ピッチャーを責めたりなんて、しないんだよっ」





―踏み出したスパイクが鼓膜を鳴らす―
(まだ新品で真っ白なユニホームを)
(思いっ切り泥だらけにしてく彼等を)
(純粋に羨ましいと思った)



2011.08.20
提供:星屑


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