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どんどん遠くなる、君の背中




(千代ちゃん、大丈夫かなあ)

気がつけば試合は7回まで進んでた。
そこでふと気づく。
ウグイス嬢もスコアもアイちゃん当番(アイちゃんのお世話係です、)も全部千代ちゃんに任せて
あたしは何もマネジらしいことをしていないと。
(どっ、どう、しようっ…)


「葉山っ!」

「うわっ!はっはいっ!」

「そんな驚かなくても…ジャグ減ってるぞ?」

「ほん、とだ!巣山くん、ありがとう!」


慌てて氷とペットボトルを開けてジャグに注ぐ。
選手に言われるまで気づかないなんて、マネジ失格じゃないか。


「どうかしたか?」

「ふへっ?」

「ここにシワ寄ってる」


どっか痛ぇのか?と言う花井くんにブルブルと首を横に振る。
シワが寄ってたおでこを触りながら花井くんを見上げた。
(思い切って聞いてみよ…)


「花井くん、私、」


ここに居て、いいのかな?








「ここに居て、いいのかな?」


難しい顔してた葉山に声をかけたらこんな返事がきた。
何を考えてんだかサッパリわかんねぇ。


「なんでそぉ思うんだよ」

「…マネジの仕事、何も、してない。」


どうやら彼女はしのーかに色々任せてしまったことに今気づいたらしい。
そんな顔するくらいならもっと早く気づけよ…。


「試合に夢中で、すっかり…」


段々と小さくなる葉山。
20cm以上の身長差のせいでただでさえ小さく見えんのに。


「お前はお前の出来ることすりゃーいいんだよ。」


頭をポンポンと叩いた。
妹たちが、これが1番落ち着くと言っていたから。


「田島の役にたったんだろ?泉から聞いたぜ。」


な?と問えばうん。と返ってきた。
納得のいってないような返事だったが今は試合中だ。
これ以上は話してられない。

グローブを持ってベンチを出ようとした。


「はっ、花井くん!」

「ん?」

「いって、らっしゃい。」


へにゃっと笑った葉山は、確かに女の子だった。




―自信を持って、自分を信じて―
(いってらっしゃいって、なんでだ?)
(頑張って!ってこと!!!)



田島→桃
2011.08.19
提供:星屑


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