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消えない、消せない、色褪せることのない思い出たち。
「智也!あたし、ピッチャー楽しいよ!」
「ほんとか?!俺もキャッチャー楽しいぜ!」
小学四年生になったばかりの頃、智也とあたしのバッテリーの初試合がやってきた。
小3の頃のあたしじゃまだまだ1つ上の四年生には勝てなくて、ジュニアの中の最高学年である四年生でやっと投手として試合に出れた。
実を言うと、投手以外のポジションでならあたしだって試合に出ることはできた。
それは智也も同じで。
「よー桃。初試合のコンディションはどうだ?」
「りょっ涼くん!」
「おい涼!これから試合ってやつの頭に乗るなよ」
「鈴木さんたち、見に来てくれたんですか?!」
このチームにはあたしたちバッテリーじゃ越えられない、大きな存在があった。
「今日、Aチームは午前だけでな。」
「大丈夫かあ?」
「うん!葵くん、ありがとう。」
双子の鈴木葵くんと涼くん。
双子でバッテリーなんて素敵だなあって初めて会ったときは思ったけど、プレーを見てたら強敵だって気づいた。
小学生では稀に見るアンダースローに、サイン交換の速さ。
この人たちを見て、ただ速い球を投げればいいんじゃないんだって気づかされた。
「お前らが優勝できたら一緒に祝勝会できんな」
「そうですね…。涼さん、俺達勝ちますよ、な?」
「もちろん!1番になりたい!!」
「桃、それ口癖だよな」
涼くんは何でも吃驚するあたしをよくからかってきた。
(いきなり話しかけてきたり、曲がり角から突然現れたり)
葵くんは心配性なのか、智也と同じくらい一緒に居た気がする。
「お前らがAに上がってきたら」
「「?」」
「俺達バッテリー同士でチーム引っ張って、優勝しようぜ?」
そのためにも、あと一年頑張れよ!!
そう言って二人はベンチを出て行った。
遥か遠くの懐かしき思い出。
その二人が同じ埼玉で活躍してるとは知らずに…。
―太陽を手にする英雄―
(あと3回。頼んだからな!)
(っ!行ってきます!!!!)
葵→桃
2011.08.18
提供:魔女
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