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昨日の敵は今日の友って、本当のことだったんだ。




「った、田島くん!」

「ん?どーした桃!俺次だから「お節介かも!しれないんだけど…」


1回を守り抜いて次は攻撃。
4番からだなあって思ってたら、珍しく葉山が田島に話しかけてた。
二人はこそこそ話してるつもりなんだろうけど、田島は元々声でけぇし、葉山は声が上擦ってて、聞き取りやすかった。




「あのフォークを打つなら、今しかないと思う。」

「?どういうこと?」

「多分叶くんは、もっとすごいフォークを持ってる。けど、これなら田島くんは絶対、打てるよ。」


葉山がたくさん喋ってるよ!と驚く反面、疑問が浮かんだ。


「なあ、葉山、なんでそんなことわかんだよ?」

「えっ?!」


そーいや、周りには聞こえてねぇつもりだったんだよな。


「大丈夫だよ。俺がたまたま聞こえただけだから。」


そう言ったら「あのね、」と重たそうに開いた。


「ピッチャーって、自分の決め球は、完璧にしたいと思うんだ。」

「うん。」

「叶くんはまだ1回しか終わってないのにフォークを投げた。キャッチャーのサインもあるんだろうけど、ここでこんなに投げるってことは、まだ最後にとっておいてるものがあるって、…思った、の。」


言っちゃったよ…って顔をしてる葉山は慌てて俺から視線をバッターボックスに居る田島に移す。


「…来る。」




タトッ、キン――――




「ほらねーー!」


「どどっどーするっ」

「ナイバッチなナイバッチっ」

「おしっ」

「「せーのお」」

「「ナイバッチーーー」」








田島くんは宣言通り、叶くんのフォークを打った。
しかも、打席てステップして。

田島くんは覚えてないかもしれないけど、あたし、あなたと戦ったことあるんだよ。
その時、なんとなくだけど、何を投げても打たれると思った。
案の定、打たれたし。
すっごく悔しかったけど、あの笑顔をみたら、楽しくなっちゃうんだよね。


「桃ー!打ったよー!」

「うん!ナイバッチー!!!」








―走り出せ青春―
(ひまわりがよく似合う彼は)
(普段もプレイ中も人を楽しませる)
(不思議な才能の持ち主でした)



2011.08.17
提供:星屑


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