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1番叶って欲しいと願った夢は、一生叶わないものでした。
「うまそうっ。」
「「「うっうまそうっ。」」」
「「「いただきます!」」」
只今、ご飯という名の戦争中です。
次から次へと彼らの胃に運ばれてく料理を見てあたしは唖然とした。
「桃ちゃん、食べ終わったら銭湯行くんだって!」
あの場から去ったあたしは、丁度山菜を摘み終えて帰ってきた千代ちゃんに遭遇した。
今にも泣きそうな顔をしてたあたしに、千代ちゃんは何も聞かなかった。
その後は、もちろんモモカンにしっかりお説教されて、(あたし、怒られすぎだ)
阿部くんとは一度も、会話どころか目すら合わない。
「ふぁーっ。」
銭湯から帰ってきたあたしは日課である投げ込みとランニングへ。
今日は一人だから壁あてか。なんて考えながら30分ほどのランニングを終えた。
壁と向き合ってボールを放つ。
壁あての音を聞いてると、虚しくなるから嫌いだ。
そういえば、アイツと出会ったのも、一人で壁あてをしてた時だった気がする。
あの時、あの場所から、あたしの夏が動きはじめたんだ。
「「あ。」」
重なった声の先には葉山が居た。
上下黒のジャージに赤のライン。
右手には白球がしっかりと握られている。
「…何してんだよ」
「ちょ、ちょっと、はっ走りに…」
別に俺は葉山が嫌いじゃない。
水谷みたいに長い会話ができるわけじゃねーけど、それなりに分かってたつもりだった。
今朝までは。
「あのさ、」
「…はい」
「俺、別にお前が男だったらとか思ってねぇよ?男だったら135とか普通に投げたりするし。」
……ってあれ?
俺また余計なこと言ってる気が…
「手、貸せっ!」
「はっ?」
返事も聞かずに、モモカンに言われた通り葉山の手を握った。
右はボールがあるから左。
(そーいやこいつ左投げだ。)
握った手はマメやタコがいっぱいで、女子みたいな手じゃなかった。
「…阿部くん」
「ん?」
「あたし、女だけど、野球、好きだよ。誰にも、負けたくない。」
今まで見たことのない笑みで葉山は俺に言った。
―野球して、君が居て、―
(いつかこいつに伝えたい)
(お前も大事な「部員」だってこと)
2011.08.11
提供:魔女
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