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背中に話しかけたって届かないってこと、知ってますか?
「阿部くんっ!」
「んあ?」
俺が三橋の所で色々喋ってたら葉山がやってきた。
「あの、その、代わる、よ?」
「…代わるって?」
「みっ三橋くんの看病!」
そう言った葉山はやっと言えた…って顔をしてた。
「いや、でも俺「体調!管理もっ、…マネジの仕事ですから!」
お願いだから代わって!って言われてるような気がして、俺は素直にそこをどいた。
遠くからじゃ何を話してんのかわかんねーけど、心なしか三橋の顔色がよくなった気がした。
これが男女の差か?なんて思ったけど、葉山はちょっと違う気がする。
クラスも7組と9組でちげぇーのに、なんでだ?共通点なんて…
「あ。」
あんじゃねぇーか。アイツらにとって1番好きな共通点が。
阿部くんに勢いのあまり「任せてっ!」なんて言ってしまったけれど、二人になってからどうしたらいいのか、ちょっぴりパニックになってた。
「えっと、三橋くん、大丈夫?」
「う、うっん」
結構辛そうだ。
目の下にはクマがあるし、先程同様、顔は真っ青だし。
「…寝不足?」
そう聞けば、あんまり眠れなくて…。と返ってきた。
思い当たる節はある。
恐らく、合宿の最終日にある三星との試合が原因だ。
「投手ってさ、楽しいよね。」
「うえっ?」
「1番長くボール持てて、バッターと1対1で戦えて、素敵なバッテリーが居て…」
バックには支えてくれる仲間が居るんだもん。
目の前の三橋くんは口をパクパクしながらこっちを見てる。
ちょっと喋りすぎたかな?
なんか三橋くんに対してはスラスラと話せるんだよね。
(犬みたいだから?いや、弟かな?)
「っあ、葉山、さん」
「?」
「俺っ!投手、好きだよ!」
―少しずつ、ゆっくりと―
(ちっ千代ちゃん!三橋くんが喋ってくれた!)
(やったね桃ちゃん!)
((三橋に先越された?!))
2011.07.29
提供:星屑
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