ホログラム | ナノ
「リリーはセンの友達で、僕もセンの友達だから、リリーと僕も友達・いやそれ以上の関係になれるってことだよね!」

 とか何とかわけのわからないことを抜かすジェームズの手によってセンが悪戯仕掛人の他三人に紹介されるまで、時間は驚くほどかからなかった。
 以前顔を合わせたときとは打って変わって穏やかに微笑むリーマス・J・ルーピンに、まだ若干の怯えを見せつつもセンと目を合わせられるまでになったピーター・ペティグリュー、そして相変わらず憮然とした視線で彼女を威圧するシリウス。よくもまあ勝手に話を進めた揚句、勝手な印象を抱いてくれたものだ・とそれを見た彼女は思った。

「ええと、ミス・カタヤマ?」
「センでいい。どうせ、ポッターは止めてもそう呼ぶから」
「……じゃあセン」

 一通り自己紹介を済ませたあとに生まれた沈黙を破ったのは、グリフィンドールの監督生・リーマスだった。人あたりのよさそうな笑顔と言葉尻は、何を話せばいいかわからずに戸惑っていた彼女の心をやんわりと解きほぐした。

「僕たちは不思議でたまらないんだよ。その……ジェームズは、きみとは絶対に関わりたがらないだろうと思ってた」
「なぜ?」
「きみがとても優秀な魔女だから」
「ひどいなあ。きみたちは僕をそんなに傲慢で高飛車な男だと思っていたのかい」

 その通りである。

「とにかく、知り合えて本当に嬉しいよ。これからよろしく。セン」
「……こちらこそ、よろしく」

 リーマスの言葉に控えめに応えると、傍らのピーターも恐る恐る右手を差し出してくる。彼女はその手をこれまた控えめに握り返す。じわり・体温が滲む。
 こんなに暖かい空気の中に、自分がいるだなんて信じられない。思わず、彼女からまだぎこちない笑みが洩れ出た(その顔を見てすかさず「あっ、センが笑った!」と叫んだジェームズは、瞬時に飛んできた彼女の拳をみぞおちに受けて踞ったまま動かなくなった)。
 だが、さきほどからずっと押し黙っていたはずのこの男が、そう簡単に納得するわけもない。

「お前、いったいどんな手を使ったんだ」

シリウス・ブラック。とても低くて冷たい、責めるような声音だった。
 リーマスもピーターも、たとえセンが何か謀をしていたからといって、ジェームズが騙されるとは露ほども思っていない。それはシリウスだって同じのはずだ。
 にも関わらず、彼にここまで言わしめる理由は何なのか。彼女はいったい何者なのか。判断するには材料が少な過ぎて、少年たちは彼を宥めることもできない。
 だが、身に覚えのない暴言を甘んじて受けるほど、センの方は穏やかな気性を持ち合わせていなかった。

「私の何がそんなに気に食わないのか知らないけど、言いたいことがあるならはっきり言えばいいと思うよ。ブラック」

察してなんて絶対にやらない。



バーサス