「ポッターたちと一緒にホグズミードへ行こう」という提案に最初は渋っていた彼女も、珍しく己の身なりに気を遣うセンを見て、だんだんと表情を和らげ始めている。これでジェームズもいつもよりましなアタックが出来れば良いのだが 「流石僕のリリー!私服姿も可愛いね」 センのささやかな祈りも虚しく、彼は開口一番「私がいつあなたの物になったのよ!」と憤るリリーから鉄拳制裁を受けていた。アーメン。 「セン、今日感じが違う」 「うん。久しぶりの外出だから、ちょっと頑張った」 「……お前、いつも何もしないであれか」 普段と違う服を着て、今日は薄らとだがリリーに借りた道具で化粧もしている。慣れないことばかりしすぎたせいで俄かに緊張を隠し切れないでいたセンだったのだが、リーマスの一言で心は格段に軽くなった。彼の表情から察するに少なくとも、変・ではないのだろう。……シリウスの言った「あれ」の意味はよくわからないが。 「シリウスは、センはそのままでも充分可愛い・って言いたいんだよ」 「な、リーマスてめ、」 「あはは、照れるなあ。でもバタービールはしっかり奢ってもらうからね」 何気ない会話をしながらシリウスの腕を掴み、リーマスに目で合図をする(ピーターは明日提出の課題が終わらないため、残念ながら居残りだ)。 ジェームズの誘いを受けたその時から、リリーが彼に食ってかかるであろう予想はついていた。そこで、彼女はそのあいだにリリーたちを置き去りにして、三人で出発してしまおう・と決めていたのだ。暫く意図がわからずに怪訝そうにしていたシリウスたちも、やがてにやりと笑うと・歩き始めたセンに足早に続く。 「やるじゃねえか」 「まあ、せっかくだしね」 「ジェームズ……上手くやるといいけど」 不器用でお調子者の友人に心の中でエールを送る。すると、なんだか不思議にとても暖かい気持ちになったので、センは両脇にいた二人の手を強く握った。 |