紅遙様へ


1万HITフリリク/ハレアレ♀/学生

温かい冬




「寒い!」
「離せ」
「イヤだ。寒い。ハレルヤ温めて」
「阿呆」

日の落ちた学校の帰りは寒い。今日みたいに風の強い日はなおのことだ。

「うぅ〜。ハレルヤ、早く帰ろう?」
「だったら離せよ。動きづらい」
「イヤ」

アレルヤは即答すると抱きつく腕に力を込める。いつもなら寒くても腕に引っ付く程度だが、今日はハレルヤの体に抱きついている。
早く帰りたいなら走ればいいのだが、何度言ってもアレルヤは聞き入れない。
抱きつかれるのは構わないのだが、どうにも調子が狂う。ハレルヤは大きくため息を付いた。



結局、自宅に着くまでアレルヤは離れなかった。やっと解放されると思ったハレルヤだったが、腰に回された腕は離れなかった。

「アレルヤ、ストーブ点けてやるから離れろ」
「燃料入ってないもん」

……そういえば、今日にでも買いに行こうと言っていたような。だがこの状態ではそれも無理だろう。

「なら風呂にでも入ってこい」
「……ハレルヤ、一緒に入ろう?」
「っ……」

本当に、どうしたというのか。
据え膳食わぬは男の恥、という言葉はあるし、アレルヤに対しては正しくそうだと思っている。
だがそれとこれとは話が別。湧くのは欲より違和感だ。というより単に慣れない。

「……ベッドにでも潜ってろ」
「じゃあ連れてって。一緒に温まろう?」

腰に引っ付き背中に頬をすり寄せるアレルヤには見えないが、ハレルヤの顔は赤くなっていた。
違和感だの慣れないだのと思いつつも、こうもベタベタされれば意識してしまうもの。
ハレルヤにはすこし暑いくらいだ。

「寒いよ〜ハレルヤ」
「だから風呂に入るか、ベッドに潜るかしてろってさっきから――」
「寒い〜」

聞いてねぇな?
ハレルヤは本日何度目かのため息を付いた。
本当に、今日はどうしたというのか。いままでこんなことはなかった。むしろ自分が――

「……あ?」
「? ハレルヤ?」

あぁそうだ。去年までは、むしろ自分がアレルヤの腰や肩に腕を回していたじゃないか。
家に着けばその体を抱き上げ、自室のベッドに連れ込んだじゃないか。
抱きしめ、肩に顔を埋めると、アレルヤはくすぐったそうに笑い、温かいと言っていたじゃないか。
あぁそうだ、そういうことだ。つまりアレルヤは、去年までの俺を真似ているのだ。
この甘え方を知らない、自分はなにも要求しない。そんな姉が、驚くほど大胆に。
ハレルヤは口元がほころぶのを止められない。

「アレルヤぁ」
「ハレルヤ?」
「寒いな。寒くてたまんねぇなぁ?」
「ハレルヤ……!」

わかってくれた!? 背中のアレルヤに目を向けると、顔をすこし赤らめそんな表情を浮かべている。
ハレルヤは笑みを浮かべた。


さぁ、この可愛く愛おしい姉を、どうしてくれようか――?




END

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