朱堂 尋様へ


開設記念フリリク/兄×妹

それは幸せだと言おう




「アレルヤ」
「お兄ちゃん」
HRが終わり、鞄にすべてを入れ終わると、タイミングよくハレルヤが教室に顔を出した。
「帰るぞ」
「うん!」
鞄を持ってクラスメートに挨拶しながらハレルヤの元に駆け寄る。腕に手を回すと、眉を寄せしわをつくるハレルヤと目があった。
どうかしたのだろうか。首を傾げると、何でもないというように頭を撫でられた。
よくわからないが、撫でてもらえるのは嬉しい。ハレルヤの表情も穏やかなものになっていた。

「あ、」
靴に履き替えた後で思い出した。思わず出た声にハレルヤが視線をよこす。促されているようなので素直に言うことにした。
「あのね、今日の朝机の中に手紙が入ってたの。放課後話があるみたいなんだけど――」
「見せろ」
教科書と一緒に入れてしまったので探すのに時間がかかったが、鞄の中から手紙をとりだしハレルヤに渡した。
ハレルヤは目に見えて不機嫌で、渡された手紙に差出人が書かれていないのを確認すると、封筒ごとビリビリに破いて近くのゴミ箱に叩き込んだ。
「行くぞ」
「あ、でも――」
「アレルヤ」
「……うん」
腕を強く掴まれ引っ張られるようにハレルヤの後を追いかける。
アレルヤは自分が何かしたのだろうか、何か嫌な思いをさせたのだろうかと頭の中でぐるぐる考えていた。
2人に会話はなく、家に着く頃にはアレルヤは涙目になっていた。

家に上がってやっとハレルヤは腕を放したが、今度はアレルヤがハレルヤの背中に抱きついた。
「お兄ちゃん……僕、何かした? お兄ちゃんにやなことした?」
「何もしてねーよ」
「でもお兄ちゃん怒ってる。僕のせいでしょ?」
背中に顔を埋めるアレルヤを一度離し、ソファに座ったハレルヤは膝の上にアレルヤを乗せ、後ろから抱きしめた。
「……ムカつくんだよ」
アレルヤの体がビクッと跳ねる。ハレルヤは腕に力を込め、肩に顔を埋めながら続ける。
「お前が、俺以外の奴と話してんのが嫌だ。男だろうが女だろうがな。手紙貰ったなんて尚更だ。どういう意味だろうとお前に誰かが近づくのが嫌だ」
やはり自分のせいだ。謝ろう。そう思ったアレルヤが体を捻った。

「閉じこめてお前が誰も見ないように、お前を誰にも見られないようにしたくなる。けど……俺の一番はお前で、お前の一番は俺でって、わかってんのに、それでも嫌がってる俺に一番ムカつく」
それを聞いた瞬間、アレルヤは謝ろうと思っていたことを忘れた。忘れてしまうほどの喜びに包まれた。
「、お兄ちゃんっ!」
この思いをどう伝えていいのかわからなくて、ただ抱きしめることしかできなかった。
「――ごめんね? ごめん。でも、でもすごく嬉しい」
「……嫉妬されて嬉しいってか?」
「うん。でもね、違うの。お兄ちゃん、僕のこと疑ったりしなかったから。信じてくれて、でも嫌だって。それだけ僕のこと想ってくれてるんだって、それがすごく嬉しい」
自然に顔を近づける。アレルヤはハレルヤの頬に口付け、自身の頬をすり寄せる。
「大好き。お兄ちゃん大好き! お兄ちゃんが言うなら誰とも話さないよ。ずっと家にいるよ。お兄ちゃんが一番だから、お兄ちゃんだけだから」
「アレルヤ……十分だ――」
今は。




END

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