今日も平和なサニー号の甲板。各々が読書やら釣りやら昼寝やら好きなことをして過ごすゆったりとした時間。そんな中なぎさはじっとある人物を見つめていた。
「なんだ、どうしたなぎさ、俺の顔になんか付いてるか?」
流石に視線に気が付いたらしいウソップがパチンコを改造するその手を止めそう尋ねた。
「うん、やっぱりウソップの髪はすごいや。」
なぎさはウソップの髪から目を離すことなく答える。
帽子から覗く天然パーマのかかった髪。ヘアゴムで一つにまとめているがその存在感は大きい。
「昔からこんな感じなんだ。括っても広がっちまうんだよ。」
「ふーん。ちょっと失礼、っと。」
なぎさは甲板の床に胡坐をかいて座るウソップの後ろに立ち帽子を取って髪を触る。
ふわふわと自由に動き回る髪は生まれつきらしい。
「ねぇ、ちょっと弄ってもいい?」
「ん?お、おー。」
美容師としての血が騒いだなぎさはウソップの後ろで膝立ちをしウソップの髪をほどき櫛で梳かし始めた。
サイドの髪をとり編み込みを始め、気づけば物珍しさにルフィとチョッパーが近寄ってきてなぎさの両脇に座り作業を観察していた。
「どうなってんだー?」
「なぎさは器用だなー」
横から口々にそう聞こえてくる。
「おいおまえら、何をしてるか言うんじゃねぇぞ、完成したのを見るまでのお楽しみにしてるんだからな!」
ウソップ本人は再びパチンコ改造に戻り私が髪を弄っているのを気に留めている様子はない。
時々櫛を入れると癖の強い髪が絡まってしまいしまいその度に「いててて」と首ごと後ろに持ってかれ、後ろからアヒャヒャと笑い声が聞こえてくる。
「なぎさもちょっと楽しんでるだろ!」
「ごめんごめん。わざとじゃないんだけどどうしても絡まっちゃって!」
引っ張られる度にみよーんと顔も伸びてしまうウソップになぎさも笑いを堪えながらそう答える。ただでさえ手ごわい髪質なのに潮風のせいでさらに櫛が通りにくくなるのだ。
頭全体を編み込みにし後ろで一つに縛って完成。
鏡を2枚使ってウソップに後ろを見せてあげるととても喜んでくれた。
作業をずっと見届けていたルフィとチョッパーも「すっげー!」と本人と同じくらい目を輝かせている。
「なぎさすげえよ!これで少しは楽になったぜ!」
満足そうに首を左右に振って自分の髪を確認するウソップ。
喜んでくれてよかった。
その日ウソップは誰かとすれ違ったり部屋で会うたびに
「なあこれ見ろよ!なぎさがやってくれたんだ!」
と誰彼構わず自慢していた。なぎさ本人には会うたびに
「なぎさ、これ、ありがとな!」
と嬉しそうに礼を言ってきた。
-fin-
(みんな違ってみんないい)
(ウソじゃないよ)
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