運と命の展開図 | ナノ

24


“突き上げる海流”へ向けて出発した麦わらの一味。

しばらく海を漂っていると、波が高くなり船が大きく揺れ始めた。
積帝雲も上空に現れあたりが暗くなる。
マシラたちが船を縄で繋ぎ突如現れた渦潮にメリー号を連れて行ってくれた。
大渦はメリー号の何倍も大きく、積帝雲で周りが暗いせいか禍々しい雰囲気さえ醸し出している。

気が付けばマシラたちの船との綱は切られ、メリー号だけが大渦の方へと向かっていた。
巨大な海王類が為す術なく大渦に飲みこまれるのを目の当たりにし震えあがる一同。ルフィだけはこれから始まる冒険に胸を躍らせていた。

大渦の中心に到達し、海に飲みこまれるとなぎさは身構えたが、途端に辺りは静かになった。いつの間にか大渦は消え、先ほどの荒れた海が嘘のように波は穏やかだ。


「消えた!あんなでっけぇ大渦の穴が!!」

「違う!…始まってるのよ、もう。渦は海にかき消されただけ。まさか…。」


低く唸るような音と微かに感じる振動。
依然海は穏やかで、まさに嵐の前の静けさだ。


「待ぁてーー!!!」


何処からか聞こえてきた声は、酒場で会った黒髪の男のものであった。
船の帆に髑髏マークが大きく描かれているあたり、彼も海賊であったのだろう。


「てめぇの1億の首をもらいに来た!観念しろやぁ!!」


ルフィには懸賞金1億ベリー、ゾロには6千万ベリーもの賞金が懸けられており、黒髪の男はそれを目当てにやって来たという。


「…ロビン。1ベリーって何円なの?」

「…えん?魔女さんの世界では通貨の単位も違うのね。」


なぎさはロビンにこの世界の通貨事情を尋ねるも十分な返答を得られなかった。(「億」だとか「千万」だとか、とにかくすごい高額なのだろう、となぎさは自己解釈した)


静かだった海が一度大きくうねる。そして突如海面が勢いよく飛び上がった。

船体も浮き上がり空へ突き上げられる。これが“突き上げる海流”だろう。
巨大な水柱は空へと伸び頂上は見えない。爆音を轟かせ空へ舞い上がる水に乗って船は進んでいたが、やがて船体がゆっくりと水から離れだした。


「帆を張って!今すぐ!これは海よ!」

ナミの声が響き渡る。立ち上る海水の轟音に負けることなく、その声はしっかりとクルーたちに届いた。


「相手が風と海なら航海してみせる!この船の航海士は誰!!?」


頼もしいナミの言葉に、クルーの士気は高まった。
ナミの指示のもと慌ただしく動く一味。船体は完全に水から離れ、それでもなお下からの風を受けて空へ上昇し続けた。


「飛んだーー!!!」


ついに目の前に姿を現した積帝雲に、船は勢いよく突っ込んでいった。
雲に入ると中はまさに海のようで呼吸ができない。やっと酸素を吸うことができると思った時には、船は再び静かな海をただ漂っていた。
全員がむせ返っていると、ルフィの元気な声が船に響いた。


「おい!みんな見てみろよ!船の外!!」


船は青い海ではなく、真っ白な雲の上に浮かんでいた。360度見渡しても視界に広がるのは白。見たことのない景色に、一味は驚きの声を上げた。しかし雲は海のような性質を持っており、泳ぐことができた。風船のような体を持つタコに、奇妙な形をした魚…空の海に生きる生物たちも独自の進化を遂げたらしい。


突然、牛のような仮面を付けた人が船に近付いてきた。


「排除する。」

仮面の人物から突如聞こえてきた物騒な言葉に一味は騒然とする。

「……やる気らしい。」

「上等だ。」

応戦したルフィ、ゾロ、サンジはあっけなく仮面の人物に吹き飛ばされてしまった。


「え!?ちょっとどうしたの!!?3人とも!!」


高く飛び上がった仮面の人物。次の攻撃に備え、なぎさは杖を構えたが、別の人物が間に割って入り、仮面の人を追い払った。


「我輩は空の騎士!!」


ひょろりとした体型に鎧を纏った老人はそう名乗った。ネコの耳のようなものを持つ、カルーと同じくらいのサイズの鳥を連れている。

ここは海から7千メートルも上空で、なぎさたちのような海からやって来た“青海人”にはきついらしい。


「…まずビジネスの話をしようじゃないか。我輩フリーの傭兵である。」


1ホイッスル500万エクストル。
空の騎士はそう言って銀色のホイッスルを投げてよこした。そして本来500万エクストルかかるところを、特別に1度だけタダにしてくれた。
困ったときにホイッスルを吹けば空の騎士が助けに来てくれるらしい。
空の騎士、ガン・フォールは、鳥のピエールをペガサスに変え消えてしまった。

しかし彼は今後のことについて何も教えてはくれなかったため、状況は振り出しに戻った。ホイッスルは船のメインマストにかけておき、困った人がそれを吹くことになった。


しばらく船を進めると、滝の前に立ちふさがる巨大な門の前にたどり着いた。「天国の門」と書かれている。

カシャ、カシャ。
数回音の鳴った方を向けば、老婆がこちらへカメラを向けシャッターを切っていた。
顔や手はしわしわで、背中には羽のようなものが生えている。


「観光かい?…それとも、戦争かい?どっちでも構わない。上層に行くんなら一人10億エクストル置いていきなさい。それが法律。」

「結局エクストルって何…?何ベリー?…何円?」

「あの、お金って…もしなかったら?」

「通っていいよ。」

「いいのかよ!」


巨額の料金を請求しておきながら、払わなくてもいいと言う老婆。クルーはみな首を傾げた。


「…それに、通らなくても…いいよ。あたしは門番でもなければ衛兵でもない。お前たちの意志を聞くだけ。」

「じゃあ行くぞ、おれたちは空島に!!金はねぇけど通るぞばあさん!」

「そうかい、8人でいいんだね。」


すんなりと門を抜けることを許してくれた老婆。
海に突然現れたエビがメリー号を掴み、滝を登り始めた。滝は重力を無視し遥か上空へ伸びている。

エビの進むスピードは速く、船は大きく揺れる。一味は懸命に船に捕まることしかできなかった。




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