まじないの花/2 01.共通
無事に元の姿に戻ることが出来た六郎、才蔵、佐助。まるでそのことが無かったかのように普通に時を過ごしていた。
六郎は、いつものように幸村の世話等を。
才蔵は、いつものように伊佐那海と鎌之介のラブコールを鬱陶しく思いつつもどこかでは楽しく遊び。
佐助は、いつものように忍隊の鍛練に付き合ったり、薬草採りに行ったり。
――ようやく、上田に平穏が訪れたのだ。
明くる日、忍隊頭として鍛練に付き合っていた佐助はあることに思い出しハッとした。「残りの瓶、未処分?」だったか、と。
もし、あれを間違えて誰かが開けたり、割ったりして前みたいになってしまっては大変だ。そうなってしまう可能性が無いに等しかったら無問題。だが、ひとつでも可能性があるのだとしたら大問題だ。
佐助は「我、城に戻る。皆、ここで、自習!」と声を張り上げ踵を返した。
忍である佐助の足はかなり速い。木々を颯爽と駆け抜けて、あっという間に城内へと踏み入れた。
例のアレが置いてある、自室の隣に設けてもらった薬づくりの部屋へと向かう。
どうか、誰も被害に遭っていないでくれと佐助は願い、その部屋の襖に手を掛けた。
「あ、佐助! どうしたの、そんなに慌てて」
よかった。何事もなくて。
ホッとするも束の間、よく見ると、目の前の彼女は例のアレを片手に持っているではないか。
佐助は急いで彼女の元へと駆け寄り、瓶を離させようとする。
しかし、彼女は佐助の行動に驚いてしまった。なんせ、いきなり「咲弥、咲弥っ!!!」と自分の名を連呼し、肩をつかんで揺らすのだから。
彼女――咲弥は、首がもげてしまう、と目で訴え佐助を振りほどこうと力いっぱい暴れて抵抗した。
それが、いけなかった。
手からポーンと宙を舞った瓶は天井にぶつかって割れた。硝子は四方八方に飛び散り、中身の液体は真下の咲弥目掛けて降ってきた。
「きゃぁっ!」
「っ! 咲弥っ!」
「……さ、さしゅけぇぇぇー! うえぇーん!」
こうして、男三人に続き、咲弥までも小さくなってしまったのである。
[12/03/31]
第二章始まりました! プロローグだけでも佐助のターンにしてあげました。
……三人称で書くのって、結構書きやすいですね。
[終]