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 あなたに白湯、を 弁丸編


 咲弥お姉ちゃんが、橋の柵の上を歩いていて足を滑らして川に落ちちゃったんだって。
 高さがそんなになかったからよかったけど、それでもお姉ちゃんは体を強く打ってしばらくの間安静にしておかなきゃいけなくなったんだ。それに、風邪までひいちゃって。
 だから、オイラ、お姉ちゃんのために、何かしてあげるんだ!

 でも……しようとする度に怖いお兄ちゃんにいじめられるんだ。
 さっきだって――。

『オイ、ガキ。そっちは立ち入り禁止だって何回言わせんだ? あん?』
『ガキじゃないもん。望月六郎ってんだい! 今は弁丸! オイラ、お姉ちゃんの看病しに行くんだ』
『だーかーら、咲弥は具合が悪いんだ。遊びに行くところじゃねえ。戻れ』
『看病だってば! そのくらいオイラだってできるよ』
『戻れ』
『ヤダヤダヤダ! おねーちゃーんの看病するー!』
『却下。ほら、行くぞ』
『離せー!』

 ――って、看病しに行ったら見張っていた怖いお兄ちゃん(才蔵)に無理矢理ずるずると引っ張って部屋に放り投げられたんだ。


 ヒドイやい。あのお兄ちゃん。
 皆、咲弥お姉ちゃんの看病して。オイラには何もさせてくれない。
 オイラだって……オイラだって、お姉ちゃんが心配なのに。
 お姉ちゃんはいつもオイラと遊んでくれるから。本物のお姉ちゃんみたいに相手してくれるから。困ったときは助けてくれるから。だから、今度はオイラが助けてあげたいのに。

「ヒック……おねーちゃぁぁんっ!」
「あー、ったく、そんぐらいでピーピー泣くなよ。だからガキっつってんだ」
「っ、怖いお兄ちゃん……何しに来たんだいっ?」

 お兄ちゃんは「かったりィ」言わんばかりに頭をぼりぼり掻きながら、オイラの前にお盆を差し出す。その上には急須と、湯呑と茶菓子が二つずつ。

「ほら、行ってこい」

 照れ臭そうに言うお兄ちゃんは、怖いお兄ちゃんじゃない。本当は優しいお兄ちゃんだった。

「うんっ!」

 そしてオイラは、咲弥お姉ちゃんの元に向かったんだ。

[12/03/14]
弁丸ちゃんってこんなキャラ? うーん。夢主さんと絡みがない orz

[終]



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