⇒むしろ、貴女に
――むしろ、貴女にそのような気持ちがあるから?
ということは、貴女自身が気づいていなくとも誘っているのですか?
私達の関係が崩れることはないのですか?
きちんと想いを伝えれば、貴女に届くのですか?
「……咲弥にとってはどうでもいい話かもしれませんが、聞いてくれますか?」
ベッドの上に座る緊張感ゼロの咲弥に、問う。
私がいつになく真剣に言うものだから、彼女に伝わったのでしょう。くずしていた足を正座に直して、私と向き合うように座った。
「うん、聞くよ。六郎」
想い人はえくぼを作って穏やかに微笑む。その仕草に心を落ち着かせることが出来、私は一言一言を丁寧に、口にする。
にこにこ笑う貴女の顔が大好きだということを。
物覚えついた頃から貴女に惹かれていたことを。
私のそばに、これからもずっといてほしいということを。
私の咲弥になってほしいということを。
「私は、咲弥が好きです」
もう一度、今度ははっきり「好き」だと言った。
彼女の瞳を見て。
しばらく二人の間に沈黙が流れるも、それを払い除けるのは咲弥の行動と返事だった。
――私の腹目がけて飛びついてきたのですから。
「遅いよ。六郎のばか……。私だって、六郎がずっと好きだったんだよ。大好きだよ、六郎ーっ!」
胸板をすりすりと小動物のように頬ずりしてくる。そんな咲弥に、ますます愛しさが込み上げてくる。
咲弥は私が必ずお守りしますから。
ですが、このタイミングで昨日のあれを思い出した。隣町で咲弥の隣にいた男の存在を。
思い出すだけで憤りを覚える。ただ、今はもう私の彼女になったのです。誰にも触れさせはしませんので。
この感情を抑えつつ、愛しい彼女の小さな背中をなでた。
「咲弥、私も大好きですよ。……その、一つ聞きたいことがあるのですが、昨日、隣町で誰と一緒にいたのですか?」
元彼とか、別の好きな人とか口にしたらひどく落ち込みますが、モヤモヤするよりは明らかにさせておきたかった。
すると、咲弥は顔をほころばせた。
「あれは私のいとこ。自分の母親に誕生日プレゼントを買いたいからって。私も伯母さんに花束あげようかなって一緒に行っただけだよ。六郎のことがずっと好きだったのに、他の人を見たりなんかしないよ」
しかも「六郎がいたことに気付いてた。嫉妬してくれたらいいなって思って」とオマケ付き。
やられました。完全に。
私の完敗ですね。
私だって、やられっぱなしではいられません。今からでも、貴女に仕返しをしましょうか。とびっきり甘いやつを。
「愛しています、心から貴女だけを……。ずっと傍にいてくださいね」
「うんっ! 六郎ー!」
「咲弥」
「六郎!!」
「咲弥……そろそろ食べてもいいですか?」
[12/03/13]
別名『ハッピーエンド』。三パターン書けて満足♪
[終]