あなたに白湯、を アナスタシア編
月明かりに照らされた夜は、夢と現を半分ずつ見ているかのようで――。
そんな日は、独りになりたくなる。
私は、心が落ち着くあの川へと足を運んだ。
ここは、滅多に人が入ることのない所。私が私でいられる場所。
でも、今日は、川に身をゆだねて浮かんでいる人の姿があった。
「あら。先客、かしら?」
相手に気付かれないように忍び寄ると、見覚えのある色が目に入った。
「咲弥じゃない。何やってるのよ……風邪ひくわよ」
「うん……もう、帰るよ……っくしゅん」
「ほら、既にひいてるじゃない」
「えへへ。そうだね、すぐ治るから大丈夫だよ」
仲間とは言えども、他人のことなんてどうだっていいはずなのに、咲弥のことは放っておけない。
仲間として好きだから?
いいえ、きっと、私と境遇が似ているから。
だから、私と同じ目に遭ってほしくないのよ。初めに「仲間」と思えた人だから。
咲弥には、あの生温い上田にいることが一番だから。
「さっさと帰りましょう。白湯くらい出してあげる」
「ありがとう、アナ。……悩み事があるなら、私にくらい言ってよ?」
「馬鹿ねぇ。そんなの無いわよ。さ、帰りましょう」
――どうか、私の分まで幸せになって。
[12/03/10]
これ、熱ネタじゃない……orz(アナの裏切りが起こる前の出来事でした)。
[終]