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 あなたに白湯、を 幸村編


 六郎から、咲弥が高い熱を出してしまったと聞いた。
 ったく、どうしようもないお転婆だ。あれほど、傘を持って行けと言ったのに。ヤツは言うことを聞かんからのう。


「咲弥、気分はどうだ?」
「あ、幸村様……。はい、おかげ様で大分よくなりました……」
「そうか? まだよくなっておらんだろう?」

 額に乗せていた布を取ると、もう冷たさは残っていない。むしろ、温かい。
 ワシは枕元にあった桶に布を浸して冷ます。また額に乗せても水が零れて来んようにきつく絞って、置いてやる。
 冷たくて気持ち良いのか、ゆっくりまぶたを閉じて息を吐いた。

「気持ち良いか?」
「はい、とっても」
「ワシが直々に看病をしておるのだ。早う良くなってもらわんと、怒るぞ?」
「はいっ!」
「いい子だ……」

 普段も、素直だったら良いのう。
 だとしたら、皆が咲弥を狙いに来る。それは困る、な。
 それにしても、熱を出して弱った咲弥も、良いのう。色気が増して。
 ワシは、すやすやと眠りについてしまった彼女の髪に触れた。絹のような触り心地で、ずっと弄びたくなってしまう。
 すると、襖の方からよく見知った気配があった。

「……六郎、そこにおるのだろう? 入って参れ」
「はい……若、熱めの白湯をお持ちしました」
「うむ。ご苦労であった」

 今起こすのはもったいない。だから、白湯を飲ますのは後に致そう。

[12/03/10]
初めて幸村寄りを書いてみました(普段は書きません)。

[終]



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