言ってみろよ。お前が愛してるのは誰?
※暴力表現有り
「ほら、言ってみろよ。お前が愛しているのは誰だ?」
「ゲホッ……」
「俺だろ? 才蔵って、お前のその口で言えってんだよ!」
どうかしてるな、俺は。
憎悪の渦に飲み込まれるなんて思ってもみなかった。
宵闇に包まれた頃に咲弥がいるところに忍び込んで、眠り薬で完全に起こさせないようにまでして、たまたま見つけた上田城下の隠し小屋に連れて行くなんて。
挙句の果てには両手足を縄で縛って寝かせて、柱に結び付けたんだからな。
薬が切れて目が覚めたお前は、俺しか見えていない。
フッ……最高だな。
俺は独占欲と優越感に浸った。
だが、俺の手で拘束した女は、俺の名は呼ばない。
馬乗りになって何回も、何回も、何回も殴っても、着物を引き剥がして穢しても「才蔵」とは口にしない。全部全部、アイツの名前だけ。
「言えよ、言えよ……言えってんだよ! お前が愛しているのは誰だ? なあっ?!」
「いやぁっ!」
好きなヤツに手を上げるなんて最低だ。
足も、腕も、頬も、俺が我を忘れて殴った痕が無数についていた。綺麗な肌に、傷つけちまった。
最低ェだ……。
わかってんだよ。
もう、止まんねえんだ……抑えられねえんだよ。
いっつも、にこにこしながら「今日はあの人にお菓子をもらっちゃった」とか「あの人とお話できて幸せ」とかばっかりだ。あの人、あの人ってうるせえんだよ。
ほら、泣けよ!
わめけよ!
才蔵って、俺の名前を呼んでみろよ!!
「咲弥……」
そして、また俺は愛しい愛しいお前を弄り続ける。
感情をなくしてしまったお前を。
――ごめんな……。
[12/03/03]
狂愛好きです。危うく裏方面に行きそうに……。アイツが誰なのかご想像にお任せ。
[終]