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shortshortstory!

Main/Series/Gift/くろちゃん


20120831 15:17

モブ黒→青黒

「ごめん、テツ」

「…どうして青峰くんが謝るんですか」

「…悪かった」

テツの辛さに気づいてやれなくて、悪かった。


潤いを失った青峰くんの唇から漏れるように溢れた言葉は、掠れてて震えてて。

でも確かな強さを持っていた。

その言の葉は感情を失いひび割れて再生することが不可能となった僕の心を、強く揺らした。
その言葉はバラバラに散ったガラスの破片を集めるように
丁寧に、そして確かめるように僕の心を組み立てていく。

まるでジェンガのように。


「…ごめん、テツ」
「いつまで…謝ってるんですか」
「……お前が…好き、なんだ」
「……青、峰…くん…?」
「…お前が…テツが、好きなんだ。あいつなんかと付き合う前から、ずっと。お前のこと、ずっと好きだった」


『ずっとお前を見てた』

らしくもなくひどく傷ついたような顔をしてブルーの瞳はゆらゆらと揺れる。


「…そうですか」
「……テツ?」
「……青峰、くん」
「…なんだよ」


まだこの胸の深い傷は未だ生々しい記憶を呼び起こす度うずく。
いつ立ち直れるかなんて僕自身もわからない。

それでも青峰くんは感情を失ったこんな僕のことを好きだなんていう。
生きたまま死んでる、人間の器だけで生きているようなこんな僕のことを。


(それでも、それでもこれからも生きたまま死に続ける僕を、)

「…青峰くんは、愛してくれますか?」

青峰くんだけが一緒にいて、愛してくれるなら−…。


「もちろんだ」

ガラガラと壊れたジェンガは組み立てられていって、
完成まであと、少し。

不敵に笑う青峰くんはやっぱりかっこよくて、久しぶりの笑顔を弱々しくうかべた。


「僕も好きです、あおみねくん。ずっと、前から」

だったら両想いだな。
そう笑った青峰くんの言葉はどちらからともなく仕掛けたキスに淡く飲み込まれた。


20120828 14:19

火黒←黄

俺はなんて汚い人間なんだ。

見た目がかっこよくたって可愛くたって中身が汚かったら意味がない。

そう俺みたいに。


だって、あの子が欲しいんだ。
影は薄いくせに、誰よりも光のように輝くあの子が。

(…ねぇ、黒子っち)

「どうして、俺じゃないの?」
「…え?」

ああダメッスよ俺。
言っちゃダメ。黒子っちに嫌われちゃう。

黒子っちはガラス玉のような瞳を光らせて俺を見つめる。
クラクラと目眩を覚えるくらいに。

「…なんで、火神っちなの?」
「え?」
「なんで、どうして俺じゃないの?」
「どうして、と言われても…」

分かりません。
苦笑して言う黒子っちはやっぱり綺麗だった。
でもそのすべてが俺のものじゃないのが悔しかった。

出逢ってからずっと、ずっと好きだったのに。
黒子っちが俺達から離れても、ずっと好きでいたはずなのに。
どうして伝わらなかったんだろう。

(…可哀想な黒子っち、俺が黒子っちのことを狂うくらい好きだってことを知らない)

悔しかった。
自分の気持ちが伝わらなかったことが。
俺達から、離れていったことが。

青峰っちや緑間っちにさえ「狂ってるぞ」なんて言われたけど。
そんなことどうでもいい。
黒子っちが俺を好きになってくれさえすれば、どうでも良かった。


(…もう、疲れたッス。…やめよう。だったらいっそ、)





そう、黒子っちの折れそうな白い手首に手を伸ばしたとき、
黒子っちは笑った。

「なんだか、分からないんですけど…」

それはそれは、ひどく嬉しそうに。


「彼のことが好きなんです」

誰よりも。
そう言って今まで一度も見たことない笑顔を浮かべた。

(…綺、麗)

その時、ふと思ったんだ。

「…黒子っち、ひどいよ」
(だってそんなの、無理ッスよ)


「そんなの俺、敵わないッスよ」

(俺は、あいつに敵わない)


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