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悲恋湖



湖が見える場所まで出て、みんなで湖を見渡す。
ちなみに途中で疲れ果てて歩くのが遅くなった他の人たちを美雪とあたしとはじめちゃんと空は追い越した。
そして九条さんを間に挟んであたしたち四人が並ぶ。
後ろにはやっとついた···という風にみんなが荷物を地面に置いた。



「これが悲恋湖です」
「悲恋湖···」
「きれー···」
「本当···」



九条さんの言葉にはじめちゃんと美雪と空が湖を見ながら感嘆の声をあげた。
ちなみにあたしはさっきの吊り橋の恐怖があり、言葉は発せない。


もうなんか、あれだけで結構疲れた···。



「この湖にはちょっとした神秘があるんですよ」
「神秘···?」
「まあ、見ててください」



その瞬間、地平線の方から徐々に湖が赤く染まり出した。



「あっ···」
「湖が赤くなった!」
「嘘···!」



美雪、はじめちゃん、空の声にあたしも疲れて伏せていた顔を上げる。
目の前の湖は本当に真っ赤に染まっていた。



「この湖には悲しい伝説があるんです。昔、愛し合っていた男女が結ばれぬ恋に悲観して、手を取り合って身を投げたっていう」
「だから悲恋湖···」



へぇ、そんなのがあるんだ。
身を投げた···ねぇ。



「悲恋湖が赤く染まるのは、2人が流す血の涙って言われてるんです」
「もういいだろ、行こう!」
「あたしたちはこんなモン見るために来たんじゃないものね」



みんながそれぞれの荷物を持って踵を返す。
あたしはその後ろ姿を眉間に皺を寄せながら見つめた。


なんつーか、自己中な大人だなぁ。



『行こう、3人とも』



声をかけると三人は頷いて歩き出した。



「あの、これどなたの?」



その声に振り返ると、見覚えのある鞄。



「金田一一···?」
「どーも、すいませんね〜」



にこやかに手を挙げながら荷物を取るはじめちゃん。



「橘川さんじゃないんですね」
「ええ、橘川の代理で」



あいつ、バカか···。



「代理!?ねぇ代理じゃ権利はないわよね!?」



そう言って九条さんに詰め寄る聖子さんにあたしは首を傾げた。


権利···?



「いやぁ、橘川さんには悪いですが、権利放棄という事になりますねぇ」
「そういうことだな」



そうそうとバラしやがったな、はじめちゃんの奴。


あたしと美雪は顔を見合わせて溜息を吐いた。



「ねぇ、柚葉。権利ってなんなの?」
『さぁ?』



あたしも権利なんてそんなの初めて聞いた。


あのバカ親父、教えなかったな···!





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