三
街へと出ると、たくさんの人間たち。今からここは四国妖怪との戦争の場になる。ここに人間たちがいては危ないということで、リクオと私以外の妖怪達が人間を脅かしてここから退散させる。
「うわぁぁ」
「ば···化物ーー!?」
逃げ惑う人間たちにさらに奴良組の妖怪達が脅かす。
「おばんでやんす」
「どけ人間」
そして人間たちがいなくなると背後に百鬼を引き連れて私とリクオは四国妖怪のいる場所に向かった。険しい顔でリクオが私の腰をさらに抱き寄せる。
『リクオ···?』
「あんたはオレから離れんなよ」
『······わかってるわよ。邪魔にならない程度にね』
肩を竦めてそう応えるとリクオはフッと小さく笑った。
「お前なら全然邪魔にならねぇよ」
『それは···褒め言葉でいいのかな?』
「それ以外にあんのかい?」
『······ないわね』
邪魔にならない。ということは私はしっかりとリクオの役に立っているということだ。嬉しい限りである。
フッと軽く笑うとリクオは私の腰を抱く腕に力を込めながら、ちゅっとこめかみにキスをした。こいつ···こんな時にぃ!!
すると前方に四国妖怪が見えてきた。
「!?玉章?」
「奴良組の奴らだぞ···どういうことだ!?」
八十八鬼と対峙する百鬼夜行。四国妖怪の先頭に立っていた男が両手を広げながら口を開いた。
「キミもやはり百鬼を率いる器。あの程度では脅しにもならないか···。リクオくん···やはりボクらは似ているね」
懐から取り出した扇を広げると飾りの音がシャラン···とその場に響き渡った。静かに睨み合う私達。
「お互いの“おそれ”をぶつけようじゃないか」
長い長い夜が───幕を開ける。
「百鬼夜行大戦の始まりだ」