×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
4
翌朝。
快晴の下、アフロディーテ号はキラキラと輝く海面を進んでいた。
リドルデッキと呼ばれる船尾寄りの最上部の甲板は、景色を眺めたりデッキチェアで日光浴をする人たちでにぎわい、コナンたちもオープンカフェでお茶を飲んでいた。


「ん〜、気持ちいい〜」


蘭が両手を上げて大きく伸びをすると、園子は「ホント······」と持っていたティーカップを掲げてうっとりと見つめた。


「潮風に吹かれながらモーニングティーって······ハァ〜、なかなかのもんよね〜」


小指を立てながら紅茶を飲む園子に、蘭が思わず苦笑いをする。


「ああ、なかなかのもんだ」


と同じテーブルで渋い顔をして頬杖をつく小五郎がつぶやいた。


「なかなかのもんだ······」


蘭たちが不思議に思いながら小五郎の視線の先をたどると───テニスウェアに身を包んだ八代貴江と新見節子が夏帆の案内でデッキを歩いていくのが見えた。
小五郎は渋い顔で貴江たちを目で追うと、突然デレッと表情を崩した。


「カァ〜っ!!おい見たか?貴江社長の脚!とても50代とは思えんぞ!」


隣のコナンに同意を求めてデヘヘヘ···と鼻の下を伸ばす小五郎に、蘭と園子はハァ···とため息をもらした。
コナンと花恋もハハハ···と苦笑いする。


「もぉ!朝っぱらから何やってんのよ、お父さん!!」
「あ、いや······」


蘭が小五郎に怒鳴っていると、隣のテーブルの光彦が阿笠博士を見た。


「博士、そろそろじゃないですか?」
「え?」
「ほら、得意のダジャレクイズ!」
「どうせ出すなら、早く出してくんねーと落ち着かねンだよな!」


歩美と元太にせっつかれる阿笠博士を見て、コナンと花恋はハハ···と笑った。


((こっちは完全におちょくられてンな······))


再び蘭と小五郎に目を向けると、デッキを歩いている日下の姿が見えた。
デッキチェアに腰かけて読書をしている美波子に近づき、声をかけている。


「よし!それじゃリクエストに応えて、今回の船旅にちなんだクイズを」


日下と美奈子を見ているコナンと花恋の背後で、阿笠博士は嬉しそうにクイズを出した


「元太君が航海中に、船の診療所で治療を受けたそうじゃ。───さて!元太君はどうしてしまったのか!?一番、食べ過ぎてお腹を壊してしまった。二番、転んで足をねんざしてしまった。三番、日に当たりすぎて熱中症になってしまった。さぁ〜、正解はどれかな?」


いきなりクイズに登場させられた元太は、どの解答の自分も間抜けすぎて、阿笠博士をジロリとにらんだ。
光彦と歩美が「う〜ん······」とうなりながら考える。


「いつもの元太君なら一番ですけど······」


光彦の答えに、元太は「ブブ〜!!」と声を出した。


「一番は違うぜ〜。オレ、いくら食っても腹こわさねーもん!」


と得意げにお腹を叩くと、


「あ!わたしわかった!」


隣のテーブルの蘭が身を乗り出した。
園子も「わたしも〜!」と声を上げる。


「でもそのクイズ、お子ちゃまたちには無理なんじゃない?だって英語───」


指で英語のつづりを書こうとして、蘭が「そ、園子!」と慌てて止めた。


「英語?英語がヒントなんですね!?」


光彦が喜んでいると、ジュースの載ったトレイを運ぶ灰原が前を通った。


「第二ヒントは船」
「船······?」


子どもたちは園子と灰原のヒントをもとに考え始めた。
そして、


「あ、わかった!」


歩美がパッと顔を上げた。


「答えは二番のねんざだよ!船は英語でシップでしょ?元太君、足に湿布したのよ!」
「正解じゃ。ちなみに友情はフレンドシップ、噂話はゴシップじゃ」


得意げに答えを説明する阿笠博士に、コナンと花恋は((おいおい、ゴシップは違うぞ/違うし))と心の中で突っ込んだ。
友情は<FRIENDSHIP>で、つづりの中に『船<SHIP>』が入るが、ゴシップは<GOSSIP>だから、『船』は含まれない。


「SHIPに湿布ですか〜!」
「なぁなぁ、光彦。航海中にねんざしたら、後悔するな」
「何ですか、それ」
「ノリわりぃな、お前」


光彦と元太のたわいない会話にコナンと花恋が笑っていると、美波子と話していた日下が船内へ戻っていった。
コナンと花恋が日下を目で追う中、隣のテーブルの歩美は「そうだ」と光彦たちに顔を寄せた。


「ねぇ、アレいつ渡すの?」
「今でもいいんですけど······」


光彦はそう言って、ポケットからリボンをかけた袋を取り出した。中には昨日の夜に作った蘭へのプレゼントが入っている。
元太はキョロキョロと辺りを見回し、口元に手を当てて「なぁ、こういうのはどうだ?」と二人にコソコソと話し始めた。
すると、隣のテーブルの園子が立ち上がった。


「蘭、ラスト飲み物取りにいこっ」
「いいよ」


園子と蘭がテーブルを離れてカフェの中へ入っていくのを見届けた子どもたちは、ニヤッと笑った。
そして立ち上がり、蘭たちのテーブルに近づいていく。


「ボ、ボクたちも飲み物〜」
「と、取りに行こうかなぁ〜」
「どんなジュースにしよっかな〜」


蘭のウインドブレイカーが掛けてある椅子の後ろでわざとらしく立ち止まり、光彦はラッピング袋をウインドブレイカーのポケットにこっそり入れた。


「さあ、行きましょう〜!」


光彦が駆け出すと、


「おほほ〜い」
「待って〜」


元太と歩美も後を追って走りだした。


「な〜に、はしゃいじゃってんだか······」


小五郎とコナンが不思議そうに子どもたちを見送る後ろで、灰原と花恋は顔を見合わせかすかに笑った。
_4/15
[ +Bookmark ]
PREV LIST NEXT
[ Main / TOP ]