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13
本浦の家から走り続けていたコナンは、やがて橋にさしかかった。
息を切らし汗だくになりながら、着ていたジャンパーを脱ぎ捨てる。


(やべぇ、このままじゃ間に合わねぇ······!)


そのとき、背後から車のクラクションが鳴った。
振り返ると、阿笠博士のビートルがハザードランプをつけながら走ってきて、コナンの前で止まった。
運転席の阿笠博士が助手席のドアを開ける。


「何でこんなところに······」


コナンがリストバンドで汗を拭きながら訊くと、後部座席から歩美、光彦、元太が顔を出した。


「博士から全部聞いたよ」
「一人で行くなんて水くさいです」
「カッコつけてんじゃねーぞ!」
「おめーら······」


コナンはフッと笑い、助手席に乗った。


「コナンくんの居場所なんてすぐわかるんだから。ねぇ、哀ちゃん」


歩美の声にコナンが後部座席を振り返ると、灰原がフフンと得意げにかけていた犯人追跡メガネを上げた。
右レンズのレーダーの中央の黒い点が点滅している。
「ったく······」コナンはシートベルトを引っ張った。


「博士!東都スタジアムだ、急げ!」
「よしきた!」


阿笠博士がアクセルを踏むと、ビートルは煙を上げながら一気に加速して走り出した。
次々と車を追い越して進んでいき、コナンは腕時計をじりじりと見つめた。


「クソッ。飛ばしてくれ、博士。もうあまり時間が······」
「わかっとる!」


阿笠博士はコナンをチラリと見て、さらにアクセルを踏んだ。


「しかし、何でまた東都スタジアムなんじゃ?あそこはまだ修理中じゃろう」
「あそこが今回の事件の発端であり、最終ゴールだったんだよ」


コナンが答えると、後部座席で携帯電話のワンセグテレビを見ていた光彦が「あ!」と声を上げた。「花恋さんと蘭さんと園子さんです!」
「何!?」コナンが驚いて振り返る。


「シーズン終了のセレモニー見てたんですけど、そしたら国立競技場の観客席に······」


光彦が見せたワンセグ画面には、立ち上がってプラカードを掲げている園子と恥ずかしそうに隣で座っている蘭とピッチをずっと見ている花恋がアップで映っていた。


「花恋ちゃんたち、国立に行ってたんだ!」
「チェッ。ずるいぜ!」


歩美と元太がうらやましそうに画面を見つめる。
コナンは花恋に電話をしようと携帯を取り出した。


(······いや、あそこは大丈夫なはず。それよりも今は犯人を······)


コナンはすぐに思い直して携帯を閉じると、前を向いた。


***


修理中の東都スタジアムは開閉式の屋根が閉じられ、周りに人気はなくひっそりとしていた。
ビートルが駐車場にとまると、コナンはドアを開けて降り立ち、後頭部座席を振り返った。


「おまえら、怪しいヤツが出てこねえかここで見張っててくれ!オレは爆弾を探してくるから!」

「わかった!」
「うん!」
「わかりました!」


元太、歩美、光彦が真剣な顔でうなずき、コナンはスタジアムに向かって駆け出した。


***


スタジアムの中は照明が全て消され、半分開いた天井のドーム屋根から月明りがグラウンドの半分を照らしていた。
誰もいない薄暗い観客席の上で、周りに足場を組まれた電光掲示板がぼんやりと浮かんで見える。
電源が点いた電光掲示板には砂嵐が映っていた。
コナンが月明りに照らされたアウェイ側のゴールの方からピッチに入っていくと、センターサークルの端に人影が見えた。
ショルダーバッグを肩に下げて背中を向けて立っている人影は、腕時計に目をやり、メインスタンドを見上げた。


「小五郎のおじさんなら待ってても来ないよ。来たのはボクだけさ」


ペナルティーアークに立ったコナンが声をかけると、人影は振り返った。
しかし、人影が立っている場所は月明りが届かず、顔が見えない。
コナンはニッコリと微笑んだ。


「ボク、郵便受けのカードのトリック、わかっちゃった!カードを入れたのは、東都スタジアムを爆破した日。小五郎のおじさんに電話をかける前に、郵便受けの奥に上下にはさむように立てかけたんだよね。あの郵便受けの形状から言ってよほど覗き込まない限り、奥のカードは見えないし、他の郵便物が入っていればそれに目を取られてカードには気づかない」


コナンはトリックを説明しながら、ゆっくりと人影に近づいた。


「そしてその夕方。スピリッツのサポーターを装ってメール便を出したんでしょ?郵便受けに差し込むことはできるけど入りきらないサイズで、なおかつ封筒の両端からノリをはみ出す様に作ったメール便をね」


とセンターサークルで立ち止まり、人影をじっと見つめる。


「当然、配送する人は何かの拍子に落ちたりしないようにメール便を郵便受けの奥に当たるまで押し込む。すると、奥に立てかけてあったカードにメール便のはみ出したノリがひっつき、メール便が弾き出されれば、カードは差し出し口に当たってはがれ落ちる。これでカードは蘭が前日の午後に郵便受けを開けた以降に入れられたと思われて、アリバイ工作は完成したってわけさ」


コナンはそう言うと、目を伏せてニヤリと笑った。


「逆に言えば、このとき完璧なアリバイがある人間が犯人。そうでしょ?」


顔を上げたコナンが目を向けると、人影はコナンに向かって歩き出した。


「あのとき、警察に捕まって留置場にいたという完璧なアリバイがある、元・杯戸高校のエースストライカー、中岡一雅さん」


コナンが名前を呼ぶと同時に、人影が月明りの届くアウェイ側に足を踏み入れ、その顔があらわになった。
その人影はコナンが推理したとおり、中岡だった。
コナンの姿を見て、フッと微笑む。


「······ガキのくせに大したもんだ。名前、何て言ったっけ?」
「······江戸川コナン。探偵さ」


コナンは中岡をまっすぐ見据えて名乗った。
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