SIDE:風斗




よしっ。

打った。

白い丸は放物線を描いて綺麗にフェンスまで飛んで行った。

柵越えはさすがに無理か。

調子に乗りかけた気持ちを律するように、俺は塁に向かって走り出した。

一塁、二塁、三塁。

ホームへ帰還。

「っしゃぁ!」
「瀬野よくやったっ!!」

チームのヤツラが群がって来て、少し暑苦しく思いながらも笑顔で手を叩き合う。

でかい図体した高校球児に囲まれても全く嬉しくない、なんて口に出せるか。

坊主頭を前に、アイツだったら抱きついてもいい。とぼんやり考える。

無意識に動いた視線は三階の教室を捉えた。

場所は2−E。

その窓に頬杖をついている姿を見つけて、純粋に胸の内が熱くなった。

日曜だというのにどうして学校に居るかは知らないが、まさか俺を見に来たのか?

いやいや。

それは無い。

あの低血圧で面倒くさがりな一希が、休日返上で俺の練習試合なんか見に来る理由がないだろう。

凝視されているのだって、きっと幼馴染だからだ。

自意識過剰にならないように自制しながら、俺は試合に意識を集中しようと努力した。




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